
かつて「産業技術の揺りかご」と呼ばれた韓国の大学が、今や技術流出の脆弱地帯に転落している。特に中国企業による韓国先端技術の引き抜きや情報窃取が深刻化し、学術界が国の安全保障リスクに直結する状況となっている。
韓国産業通商資源省によると、2020~2024年に発生した産業技術・国家核心技術の海外流出事件105件のうち、10件が大学・研究機関から発生した。つまり約10%が「学術界発」の流出だった。
しかし専門家の間では、「これは氷山の一角にすぎない」との見方が支配的だ。大学での技術流出は、主に研究者の自主的申告や内部告発に依存しており、公式統計に現れない“暗数犯罪”の割合が非常に高いとされている。
実際、流出が発覚しても捜査が及びにくいことから、犯罪はますます大胆化している。
たとえば2017年、韓国科学技術院(KAIST)のある教授が中国にある大学の研究者に自律走行車の核心技術である「LiDAR(ライダー)」関連の研究データを流出させた事件が発覚した。
LiDARはレーザーを用いて周囲の障害物を認識する自動運転車の中核技術だ。
また、韓国航空大学の教授は風力発電ブレードの試験計画データを中国企業に流したとして、2022年に最高裁で有罪判決を受けた。この教授は元勤務先の国策研究機関から技術ファイルを持ち出していた。
さらに衝撃的なのは、中国の車載電池メーカー「蜂巣能源科技(SVOLT)」が2023年、高麗大学内に法人を設立し、韓国国内の大手企業の研究者に接触して技術を盗み出そうとした事件だ。問題の企業は「SVOLTコリア」として高麗大の産学館に入居し、サムスンSDIやSKオンの元研究員らに近づいたとされる。
高麗大学は今年1月に実態調査を実施し、2月には入居契約を解除したと発表。関係者は「技術流出の意図を隠して入居した企業を今後は排除できるよう、信頼性審査などの手続きを強化する」と述べた。
中央大学産業セキュリティ学科のチャン・ハンベ教授は「韓国の技術保護政策は最終成果段階にのみ集中している。しかし海外では、技術が成熟する前の大学・研究段階での引き抜きが加速している」と警鐘を鳴らしている。
(c)MONEYTODAY