
非転向長期囚のアン・ハクソプ氏が韓国政府に北朝鮮への送還を求めてから約4カ月が経過したが、南北間でこの問題をめぐる具体的な協議は一切進んでいない。11月末にはイ・ジェミョン(李在明)大統領もこの件に言及し、人道的観点からの送還の必要性を強調したが、南北関係の断絶が長期化する中、アン・ハクソプ氏の送還が早期に実現する可能性は極めて低いのが現実だ。
12月1日、アン・ハクソプ氏の支援団体「アン・ハクソプ先生送還推進団」と統一省関係者が面談し、送還問題について意見を交わした。統一省側はこの場で「大統領も言及した重要な案件としてさまざまな方法を模索しているが、現在北朝鮮との関係が完全に遮断されており、政府としては何もできない」との立場を伝えたという。
これに対し推進団側は、民間レベルで北朝鮮側との接触を試みるため、近く統一省に「北朝鮮住民接触申告書」を提出する意向を示した。統一省も現在、民間による対北朝鮮接触を全面的に許可する方針を取っており、これを受理する構えだという。
イ・ジェミョン大統領は11月23日、南アフリカで開催されたG20首脳会議を終え、トルコへ向かう大統領専用機内で記者団と懇談。「非転向長期囚はすでに90歳を超え、いつ亡くなるか分からない。故郷に帰りたいという願いをなぜ妨げるのか。拘束して何の意味があるのか」と述べ、送還を容認すべきだとの考えを示した。だが同時に「努力しても北朝鮮は全く反応していない」と失望を滲ませた。
韓国政府もアン・ハクソプ氏の送還を一貫して「人道的支援」と位置付けているが、北朝鮮は現在、韓国を「敵対的な二つの国家」とみなす政策を続けており、韓国からのいかなる対話提案にも応じない姿勢を貫いている。
アン・ハクソプ氏は1930年、仁川・江華郡で生まれた。朝鮮戦争当時に北朝鮮軍で参戦。1953年に韓国で逮捕され、国家保安法違反(利敵行為)により有罪判決を受け、42年間の服役を経て1995年の光復節(独立記念日)特赦で釈放された。
2000年のキム・デジュン(金大中)政権時代、南北首脳会談(6・15共同宣言)に合わせて63人の非転向長期囚が板門店を通じて北朝鮮へ送還されたが、アン・ハクソプ氏は当時「米軍が撤退するまで闘う」として韓国に残留を選んだ。
しかし最近、健康悪化などを理由に北朝鮮への帰還を望むようになり、韓国政府に送還を要請。2025年8月には、板門店を通じて北朝鮮へ向かおうと京畿道の統一大橋に接近したが、韓国軍によって阻止されていた。
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