
韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権の融和的なアプローチに沈黙を続けていた北朝鮮が、ついに公式の反応を示した。朝鮮労働党のキム・ヨジョン(金与正)副部長は、南北関係はもはや「民族」や「統一」の枠を越え、「(北)朝鮮と韓国という二つの国家の関係」へと変わったと強調し、韓国政府の努力を一蹴した。
しかしこの発言は同時に、年末から来年初頭にかけて開催されるとみられる第9回党大会において、韓国を意識した外交政策が何らかの形で提示される可能性を示唆しているという見方も出ている。すなわち、「分断の固定化」か「関係修復」かを左右する150日が始まったということだ。
イ・ジェミョン政権は出帆以来、対話を念頭に置いた各種措置を講じてきた。対北ビラの散布規制、拡声器による心理戦の中止、国家情報院が手掛けていた放送の停止などがその例だ。さらにチョン・ドンヨン(鄭東泳)統一相は8月に予定される米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド(UFS)」の調整をイ・ジェミョン大統領に進言する考えを示した。
一方で、キム・ヨジョン氏は朝鮮中央通信を通じて「韓国がいまさら感傷的な言葉で関係を取り戻せると考えているのは大きな誤算だ」と反発。イ・ジェミョン政権の姿勢に対して明確な拒否の意志を表した。
ただ、北朝鮮の発言と行動には温度差があるとの指摘もある。たとえば、キム・ジョンウン(金正恩)総書記は先月の党中央委員会で外交政策に関する発言を控え、内容を外部に公開しなかった。これは異例の対応とされている。
また、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権時代に軍艦進水式を強く非難した北朝鮮が、イ・ジェミョン政権下での同様の式典では沈黙を保った。6月25日から7月27日まで続いた「反米共同闘争月間」でも、挑発的行動は控えられた。キム・ヨジョン氏の談話も北朝鮮国内では報道されておらず、体制内ではまだ最終的な対南政策が決まっていない可能性を示している。
こうした点から、今回の談話を「対話の完全拒否」ではなく、「新たな関係の枠組みを求める圧力」と見る専門家もいる。すなわち「二国家体制」が北朝鮮にとっての最大の交渉カードであるという見立てだ。
イ・ジェミョン政権が追求するのは、従来の「民族」や「統一」に基づいた南北関係の復元である。だが、北朝鮮が党大会までに韓国との関係をめぐる明確な方針を打ち出せなければ、南北の実質的な断絶状態が固定化される可能性もある。
一方で、韓国政府が北朝鮮を動かす「第3のカード」を切るか、あるいは米朝対話を牽引することで突破口を開けば、北朝鮮が党大会を契機に対南方針を軟化させる可能性も否定できない。
2025年末まで残された約150日。朝鮮半島の運命を左右する転機となるかもしれない。
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