
韓国で約2000万人が利用しているとされる「早朝配送サービス」に対し、全国民主労働組合総連盟(民主労総)傘下の宅配労組が「午前0時〜5時の配送禁止」を主張したことが波紋を広げている。消費者はもちろん、宅配業界や他の労働者からも強い反発が起きている。
問題の発端は10月22日、国土交通省主導で開かれた「宅配社会的対話機構」で、民主労総側が「過労死防止」を理由に、深夜配送を根絶するべきだとして、事実上すべての早朝配送を中止するよう提案したことにある。現在、対話機構は年末までに最終的な対策をまとめる予定で、早ければ来年から早朝配送が全面的に中断される可能性がある。
この機構は、法的拘束力はないものの、過去には民主労総の提案により主要宅配企業の労働条件(1日の勤務時間や週の労働時間など)が実際の事業に大きな影響を与えた前例がある。
このため、共働き家庭や主婦層が集まる主要な育児系オンラインコミュニティ(ママカフェ)だけでなく、オフラインの大型スーパーが少ない京畿道・東灘、新都市・松島、慶尚南道・金海などの地域住民からも反対の声が相次いでいる。
ある主婦は「仕事から帰ってきたら粉ミルクやおむつが切れていた、早朝配送がなければ夜中に買いに走らねばならず、本当にありがたい。サービスをなくすなんて信じられない」と訴えた。
韓国消費者院の「2024年消費者市場評価指標」によれば、早朝配送は40の生活サービス中、総合評価1位(71.8点)を獲得している。また、韓国商工会議所が1000人を対象に実施した調査では、早朝配送のない地域の消費者の84%が「早朝配送が必要」と答えている。
これを受けて民主労総は10月29日、「早朝配送を全面的に禁止するという意味ではない」と釈明しつつも、深夜0時〜午前5時の配送制限の主張は維持した。
しかし宅配業界では、この案は「事実上不可能」だと一斉に反論している。ある業界関係者は「宅配業務は配送前に荷物の仕分けや積み込みなどの準備が必要で、たとえ午前5時に配送を開始しても実質的には深夜に出勤しなければならず、“深夜労働の根絶”という主張と矛盾する」と指摘する。
さらに、ほとんどの宅配物流センターは都市部から離れた郊外に位置しており、配送開始時間と通勤ラッシュの時間帯が重なるため、午前6~7時までに注文商品を届けるという早朝配送の目的自体が達成できなくなるという分析もある。
韓国物流科学技術学会の調査によると、夜間配送を担当する宅配労働者のうち36.7%が「交通渋滞が少ない」、32.9%が「昼間配送より収入が多い」、20.7%が「日中の自由時間を確保できる」といった理由で夜間勤務を好んでいる。
ある宅配業界関係者は「少数の労組の主張によって、2000万人の生活インフラや大多数の労働者の労働機会が犠牲になるのは容認できない。このような一方的な規制は国民の反発を招くだけでなく、農業・自営業など関連産業にも打撃を与え、雇用の連鎖的崩壊を招く」と警鐘を鳴らした。
(c)news1

