9月26日午前9時30分。1時間目を知らせる鐘が鳴ると、廊下で笑いの花を咲かせていた生徒たちが急いで教室に入った。飲水器で水を飲もうとして慌てて戻る生徒もいた。
教師が黒板に字を書き始めると、タブレットPCを開いて筆記するソ某さん(20)。「統一」「分断」など強調すべき単語は教科書に蛍光ペンでアンダーラインを引いたりしていた。
45分がすぎ、授業の終わりを知らせる鐘が鳴ると、ソさんは無線イヤホンをつけたまま音楽を聴く。まぎれもない高校3年生だ。友達とおしゃべりをしたり、運動場でバスケットボールで遊んだりしていた。ソさんは生徒会長を務める。
ソさんと同じクラスのイ某さん(20)も前髪に「ヘアグルフ」をつけたりするのが好きな女子学生だ。
一般に想像できる「高3」と変わりがない。
20歳の彼らが高校3年生の授業を受けるのは――北朝鮮または中国で生まれ、国境を越えた北朝鮮離脱住民(脱北者)だからだ。
ここはソウルで唯一、「脱北青少年」に中・高校の学歴を認める教育機関「黎明学校」だ。9月27日、開校20年を迎えた。NEWSISはその前日、同校を取材した。
◇開校20周年
「子どもたちですか? 昨年の1学期、運動場が使えなかったせいか、休み時間になるとすぐにサッカーをしに行きます。韓国の学生と変わりありませんよ」
2019年からここで教鞭を取る男性(40)によると、黎明学校の脱北青少年100人は韓国人の中・高校生と同じような感じで、みなアニメーションとK-ウェブトゥーンが大好きだという。
9年間、給食を担当しているイム・ヨンオクさん(65)も「韓国の学生と変わらない。韓国の子どもたちのように手羽先が好き。ビビンバとヨーグルトが人気のある食べ物ですよ。嫌いなのは豆ご飯だけ」と笑う。
問題は、彼らが社会と交わるのは難しいという点だ。
「統一市民」という科目を教える教師によると、周囲からの圧力のせいで、この学校は各地を転々としてきたという。
「黎明学校」は2004年、ソウル市冠岳区奉天洞で開校した。2008年にはソウル市中区明洞に移転し、以来、「NIMBY(Not In My Back Yard)」(うちの裏庭にはやめてくれ)の苦痛を受けてきた。つまり「迷惑施設」扱いだ。
2020年にはソウル市恩平区に敷地を買ったが、地域社会から拒絶された。現在はかろうじて、昨年廃校となったソウル市江西区の小学校に居候している。だが2026年には別の場所を探さなければならない。
◇脱北者に対する「嫌悪」
韓国国内の脱北者に対する「嫌悪」は今に始まったことではない。
ソウル大学統一平和研究院が発表した「2023統一意識調査」によると、脱北者に対する韓国人の親近感は昨年19%程度で、2007年の調査開始以来、最も低い。逆に「脱北者に親近感を抱かない」は31.9%に上る。
この教師も「黎明学校を卒業して大学に進学したら、そこの教官から『脱北者は勉強が全くできない』と言われた。大学のプロジェクトに加わったが、作った資料を露骨に批判されたり、プロジェクトから除外されたり、屈辱を味わった」と打ち明ける。
今年、開校20周年を迎え、この教師が望むことは一つだ。学校が転々とせず、定着すること。子どもたちは、かろうじて韓国の地に足を踏み入れた。そんな彼らが周囲の「烙印」から解放され、より安定した教育を受けられるように――という思いからだ。
「学校が定着できない現実は、結局、脱北青少年がまだ韓国社会に受け入れられていない状況を象徴している。脱北青少年の学力を保障する黎明学校が定着できるよう、政府と自治体が積極的に取り組むべき時に来ている」
教師はこう訴えかけた。
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