
韓国で肥満治療剤が美容目的や正常体重の患者にまで処方される事例が増加し、食品医薬品安全処が規制強化に乗り出した。供給不足のなかで需要が急増し、非対面診療の拡大や保険適用議論が重なって市場過熱の懸念が強まったため、処方基準の順守を徹底して持続可能性を確保しようとする動きだ。
食薬処は8月、医療機関と薬局に対し、GLP-1(Glucagon-Like Peptide-1)系注射剤の適応範囲と注意事項を守るよう協力文書を送付した。美容目的での処方を避け、専門医の診療を経た患者にのみ投与するよう指示。薬局には冷蔵保管や服薬指導を徹底し、副作用情報を必ず伝えるよう求めた。
米製薬大手イーライ・リリーの「マンジャロ」(チルゼパチド)は2025年8月に韓国で発売されたが、低用量のみ供給され、高用量の導入は遅れている。大病院に供給が集中し、一般薬局では患者の需要に応えられない状況だ。「ウゴービ」や「サクセンダ」も供給不安が繰り返され、違法取引や海外通販の懸念も出ている。
薬剤適正使用レビュー(DUR)資料によると、「ウゴービ」の処方件数は発売初月の1万1368件から2025年5月には8万8895件に急増。6月までの累計は39万5384件に達した。調査機関IQVIAによると、韓国の肥満治療薬市場は今年1~3月期に1086億ウォンと前年同期比162%増加、そのうちウゴービが794億ウォンを占めた。4~6月期には1686億ウォンに拡大し、GLP-1系(ウゴービ・サクセンダ・マンジャロ)が1416億ウォンを占めた。
一部医療現場では「希望すれば正常体重者も処方可能」という認識が広がり、非対面診療の拡大で検証手続きが緩む点も問題視されている。専門家は、短期的なダイエット目的の使用は副作用やリバウンドの危険を高めると警告。吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、稀に膵臓疾患など重篤な副作用も報告されている。
保険適用が始まれば患者負担は減るが、美容需要まで吸収し乱用が拡大する可能性がある。業界は「給付拡大と同時に処方基準やモニタリング強化が不可欠」との立場を示す。
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