韓国で来年3月に本格導入される人工知能(AI)デジタル教科書の実物が今週、各学校に公開される。教育省は新学期に向けた教員研修を進め、円滑な導入を目指しているものの、現場では戸惑いや不安の声が上がっている。
AIデジタル教科書は学校で出版社のサンプル本を確認し、使用する教科書を選定する流れになる。教育省は、適切な教科書を選ぶためのチェックリストや研修プログラムを提供し、学校の対応を支援するとしている。
AI教科書は、来年度の小学3・4年生、中学1年生、高校1年生を対象に、英語、数学、情報の3教科で導入される。一方、国語や技術・家庭科のAI教科書導入は見送られることが決まった。
しかし、現場では混乱が続いている。
ある小学校教員は「AI教科書が生徒の集中力を下げ、基礎学力を崩壊させるのではないかという不安がある。具体的にどのように活用すべきかわからない」と話している。また、教員の中にはAI教科書が導入される学年の担任を避ける動きがある、との指摘もある。冬休み期間中に教育環境の変化に対応しなければならないことが負担となっているようだ。
さらに、これまでの教員研修で使用されていたAI教科書が、実際に導入されるものと異なる仕様であったため、現場の適応が難しいとの声もある。全国教職員労働組合は「試作モデルだけで進められた研修では、教員は実際の授業準備に不安を抱えている」と批判している。
教育省は、AI教科書の円滑な導入を図るため、今年上半期には約1万人の「教室改革先導教員」を育成し、下半期には15万人の教員に対して研修を実施している。また、学校のデジタル基盤を改善し、導入準備に万全を期していると強調している。
教育省関係者は「2025年度にAI教科書を使用する学年のために必要なデバイスはすでに整備済みだ。来年2月までに全国の学校でデバイスとネットワークの点検・改善を完了させる予定だ」と述べた。さらに、教科書選定後には、生徒主体の授業設計が可能となる研修を提供し、優れた授業案を共有することで学校現場への適応を支援するとしている。
イ・ジュホ(李周浩)社会副首相兼教育相は、「2025年3月までにAI教科書が学校現場に定着できるよう、あらゆる準備を進める」と述べ、導入計画に自信を示した。しかし、現場の声をどれだけ反映し、実際の授業に効果的に取り入れるかが今後の課題となる。
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