韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が非常戒厳を宣布した背景に「不正選挙疑惑」を言及したことを受け、インターネットを中心に陰謀論が拡散し、その危険性が再び指摘されている。
尹大統領は12日、国民向け談話で「北朝鮮のハッキング攻撃を受け、情報漏洩やシステム安全性を点検しようとしたが、中央選挙管理委員会がこれを拒否した」と述べ、不正選挙の可能性を示唆した。
この発言に対して、極右系ユーチューバーをはじめとする陰謀論者の影響を受けているのではないかという声が上がっている。
与党「国民の力」内からも批判が出ており、ハン・ドンフン(韓東勲)前代表は「陰謀論に同調し、極端なユーチューバーに飲み込まれれば、保守の未来はない」と警告した。
実際、ユーチューブ上では陰謀論が拡散している。極端な右派系ユーチューバーは「選管が腐敗すれば国家が崩壊する」と主張し、左派系では2012年の大統領選挙で電子集計機に不正があったと疑惑を提起した例もある。
中には、陰謀論に執着するあまり、犯罪行為に及ぶユーチューバーもいる。例えば、4月の総選挙で、あるユーチューバーが不正選挙を証明しようと、41カ所の投票所に違法カメラを設置した事件が発生した。
専門家によると、陰謀論が拡散する最大の理由は金銭的な利益にある。檀国大心理学科のイム・ミョンホ教授は「ネガティブで刺激的な内容ほど収益につながるため、真偽を問わず拡散される」と指摘した。
さらに、ユーチューバーは視聴者の要望に応じて刺激的な内容を語り、スーパーチャット(投げ銭)や広告収益を得る。視聴者も極端なコンテンツを求め続けるため、再生回数が増え、収益が上がるという悪循環が生まれる。実際、ユーチューブデータ分析企業プレイボードによると、韓国内でスーパーチャット収益が最も高いチャンネルの半数は政治関連コンテンツで占められている。
専門家は、陰謀論に対抗するためには健全な対話が必要だと強調している。政治評論家のチェ・ヨハン氏は「陰謀論は完全になくすことは難しいが、健全な左派と右派が理性的に議論すれば、陰謀論が広がる余地は少なくなる」と述べた。また、イム教授は「陰謀論に取り込まれた人はそれを信じ込み、認知バイアスが起こりやすい。家族や友人と十分に対話し、一つの意見に偏らないことが重要だ」と助言した。
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