
韓国で、ブレーキがない「ピクシー自転車」に乗る青少年が急増している。これは道路交通法上で明確に禁止されているにもかかわらず、多くの若者が違法性を知らぬまま市街地を走行しており、事故のリスクが高まっている。
忠清北道清州市に住む50代の男性は最近、ピクシー自転車との衝突事故に遭った。視界の悪い路地を歩いていたところ、ブレーキが効かない自転車に乗った少年と正面衝突し、打撲を負ったという。
ピクシー自転車は本来、競技用のトラックレーサーで、変速ギアがない。ペダルと後輪が直接連動しているため、ペダルを止めると車輪も止まる。ブレーキがないと急停止が難しく、一般の自転車よりも制動距離が5~13倍も長くなる。
現行の韓国道路交通法では、制動装置のない自転車は公道での走行が禁止されている。ブレーキのないピクシー自転車は自転車として認められず、自転車道や車道を走ることも違法とされている。
しかし、ピクシー自転車はオンライン・オフラインの販売店で容易に購入でき、ブレーキのついていないモデルも制限なく流通している。一部の店舗では前輪のみにブレーキを装着した状態で販売することもあり、これを規制する法的根拠は現状存在しない。
加えて、こうした危険性についての教育や安全基盤も著しく不足している。大韓サイクリング連盟によると、全国のトラック競技用自転車場はわずか15カ所にとどまり、忠清北道には選手村と陰城総合運動場の2カ所しかない。青少年が自由に利用できる施設は事実上、皆無だ。
学校や地域社会でもピクシー自転車の構造的な危険性や法的基準についての教育はほとんど実施されていない。
忠清北道自転車連盟によれば、清州市の公園周辺には週末になるとピクシー自転車を楽しむ青少年が集まり、「急ブレーキ動作がかっこいい」「SNSを見て真似した」などと語る。だが、自分の行為が違法であることを認識しているケースは少ない。
同連盟の事務局長は「現在、清州地域だけでも約200人の青少年がピクシーに乗っていると見られる。専門知識なしに乗るには非常に危険な自転車だが、単に禁止するのではなく、安全教育や専用施設の整備など、制度的な支援が必要だ」と訴えている。
(c)news1