韓国では法的に食用が禁止されつつある犬肉が、北朝鮮ではなおも「民族料理」として称され、夏季の「名料理」として名を馳せている。
北朝鮮の朝鮮料理協会が発行する月刊誌「朝鮮料理」は最近、「(北)朝鮮の名料理、名高い食堂料理が新たに登録された」として、その名簿を公開した。その中で、最高権威である朝鮮名料理部門には、平壌タンゴギ(犬肉)店の「タンゴギロース煮」が唯一登録された。
北朝鮮では、噛むほどに甘味が増すという理由から犬肉を「タンゴギ」と呼ぶ。
「朝鮮料理」(2024年2号)に掲載された「真の民族愛を実感した日」というタイトルの記事では、平壌タンゴギ店の従業員が、2010年3月にキム・ジョンイル(金正日)総書記=キム・ジョンウン(金正恩)総書記の父=の招きに応じて犬肉料理を披露し、高い評価を受けたと伝えている。この席には、キム・ジョンウン氏も同行し、犬肉料理を絶賛したとされる。
また、同誌によれば、1カ月後の4月にも父子が再び平壌タンゴギ店の料理を楽しんだ際、大変満足したとして、従業員に贈り物をし、記念写真を撮影したという。
「朝鮮料理」は「振り返ってみれば、歴史の記録にのみ残り、消え去る運命にあったタンゴギ料理を見つけ出し、我々の民族の伝統料理として、世界が知る人気料理にしたのは、偉大な父であるキム・イルソン(金日成)主席と偉大な将軍であるキム・ジョンイル総書記だ」として、犬肉料理が「民族料理」として定着したのは先代指導者たちのおかげだと宣伝した。
さらに「一国の民族の伝統料理には、その民族が創造した歴史や文化、未来が込められており、今日その伝統に対する見方や態度は、真の愛国と売国を分かつ試金石とも言える」と強調した。
こうした雰囲気を反映してか、最近では「全国タンゴギ料理競演」も開催された。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、先月22日から4日間にわたり、平壌の黎明通りで競演が開催されたと報じている。
競演は「タンゴギ料理の科学性と芸術性をより高い水準に引き上げ、地方の特色をよりよく生かすこと」を目的としており、参加したすべての職場は、タンゴギクッ(スープ)、タンゴギ内臓炒め、タンゴギカルビ煮込みを出品したとされる。
競演の審査員は「タンゴギ料理では、しっかりと肉の血抜きをすることが最も重要な問題であり、3度の血抜き後でも、特定の部位についてはさらに徹底的に血を抜かなければ料理の味が向上しない」とアドバイスした。
また、朝鮮料理協会は競演を進める中で、タンゴギ料理に対する審査も独自に組織したという。
同紙は「料理を直接手掛ける料理人たちが各職場の料理を味見しながら、お互いの欠点を正確に把握させ、この過程が競演に参加した単位の経験を交換し、共有する機会となった」と報じている。
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