初雪が降ったある日、愛を育む若い恋人たちの物語は、ある時代を象徴するコミュニケーション手段であった公衆電話の記憶を思い起こさせる。ポケベルや公衆電話が広く利用された時代、公衆電話は直接相手の声を聞き、想いを伝える大切な通信手段だった。特に携帯電話が使用できなかった軍隊などでは、貴重な連絡手段として活用されていた。
しかし1990年代中盤以降、携帯電話の登場によって、公衆電話の需要は急減し、それに伴い設置台数も減り続けている。公衆電話の設置台数は1999年には約15万台に達したが、20年後の2018年には5万9162台、昨年には2万4982台と、当初の6分の1の規模に縮小された。
利用率の低下は収益悪化に直結した。韓国科学技術情報通信省によると、公衆電話は2002年に301億ウォンの赤字を記録した。台数削減で赤字幅は縮小したものの、ここ数年は100億ウォン規模の赤字が続いている。野党「共に民主党」のハン・ミンス議員の事務所によれば、KTが負担する公衆電話事業による営業損失は2018年に184億ウォン、2019年には168億ウォン、2021年には137億ウォンに上った。
公衆電話事業は、韓国政府が指定する「普遍的役務」に該当するため、SKテレコムやLGユープラスなど他の通信会社がKTに対して損失補填金を拠出して支援している。しかし成長性が見込めないことから、KTにとって公衆電話は負担となっている。損失補填金制度は、国民の基本的な通信サービスを確保するため、通信事業者が売り上げに応じて赤字を補填するものだ。
このような状況を受け、KTは公衆電話の持続可能性を図るため、多様な活用法を模索してきた。ATMの設置、電気自動車の充電ステーション、携帯電話バッテリーの貸出所など、公衆電話の新たな用途が試みられたが、利用者は依然として少なかった。公衆電話1台あたりの利用件数は月平均30.8件、通話時間25.7分。1日あたり1分も使用されていない計算となる。
こうした状況の中、KTは公衆電話事業を担当する「KT Linkus」の運営が難しいと判断し、固定電話・インターネット・テレビなどの販売やアフターサービスを手がけるKTサービス南部と合併を決定した。特に担当スタッフの平均年齢が50代で、5年以内に80%が定年を迎えることから、このような決断に至った。
KT関係者は「公衆電話の需要が大幅に減少しているうえ、KT Linkusの人員の平均年齢もかなり高いため、今後、退職者が多く出る」と展望する。
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