
北朝鮮が、過去最大級の推力を持つとする新型固体燃料エンジンの地上噴射試験を公開し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上を誇示した。将来的には複数の核弾頭を搭載する多弾頭ICBMの試験発射に踏み切る可能性も指摘されている。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞によると、キム・ジョンウン(金正恩)総書記は、炭素繊維複合材料を用いた大出力の固体燃料エンジンの試験を視察した。試験実施日は明らかにされていない。
同紙は、新型エンジンの最大推力が2500キロニュートンに達すると主張した。これは、2025年9月に公開されたICBM「火星20型」に搭載されたとされるエンジン(1971キロニュートン)より約20%高い水準で、開発の速さが注目されている。
仮にこの数値が事実であれば、米国のミニットマンIII(約891キロニュートン)やロシアのトーポリM(約913キロニュートン)など主要国のICBMを上回る推力となる。
北朝鮮は、発射直前の燃料注入が必要で探知されやすい液体燃料ではなく、即時発射が可能な固体燃料の開発を進めており、今回の出力向上もその流れにある。推力の増大により、ミサイルの射程延長や搭載可能な弾頭重量の増加が見込まれる。
すでに北朝鮮は、米本土を射程に収めるICBM能力を保有しているとみられており、今後は複数の弾頭を搭載する多弾頭化に注力する可能性が高い。多弾頭ミサイルは一度の発射で複数の目標を同時に攻撃できるため、防空網の突破能力が大きく高まる。
背景には、「核保有国」としての地位を誇示し、対米交渉力や抑止力を強化する狙いがあるとみられる。また、中東情勢を踏まえ、「強力な核戦力により報復能力を確保している」とのメッセージを発信する意図も指摘されている。
ただ、多弾頭ICBMの実用化にはエンジン性能だけでなく、小型核弾頭、再突入体、弾頭分離技術、誘導精度など複数の高度技術が必要とされる。このため、試験発射の可能性は高まりつつあるものの、実戦配備の段階にあるかどうかは慎重な見極めが必要との見方もある。
韓国の専門家は「今回の試験は単なるエンジン開発にとどまらず、長期的な戦力化プロセスの一環として捉えるべきだ」と指摘し、監視・偵察体制の強化や移動式発射装置への対応力向上の必要性を強調している。
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