
米国とイスラエルによるイラン空爆の影響で、世界の液化天然ガス(LNG)供給の約20%を占めるカタールのラスラファンまで不安が広がり、世界のエネルギー市場が大きく揺れている。
アジアのLNGスポット価格はわずか1週間で約40%急騰した。専門家の間では、ロシア・ウクライナ戦争当時のように公企業の赤字拡大や産業コストの負担増が再び発生する可能性があるとの懸念が出ている。
韓国はLNGの義務備蓄量と既存の中長期契約による確保物量のおかげで、短期的な供給には余裕がある。しかし事態が長期化すれば、発電コストの上昇や電気料金の値上げにつながり、経済全体の負担が拡大する可能性がある。
業界によると、国際LNG指標である「プラッツ日本・韓国到着価格(JKM)」先物価格は4日、100万BTU(MMBtu)当たり15.105ドル(約2260円)まで上昇した。これは米国とイスラエルによるイラン空爆直前の2月27日(10.725ドル、約1600円)と比べ、わずか1週間で約40%上昇した水準だ。
現在、韓国はLNGの義務備蓄基準(9日分)を上回る在庫を保有しており、さらに中長期契約による供給もあるため、短期的な影響は限定的とみられている。
ただし事態が長期化した場合、急騰したLNG価格は発電コストの上昇につながり、電気料金負担として経済全体に悪影響を及ぼす可能性がある。韓国では輸入するLNGの約半分が発電用に使われており、国内総発電量の約30%がLNG発電に依存している。
こうした状況で懸念されているのが、韓国電力公社の巨額負債だ。
ロシアのウクライナ侵攻前の2021年末時点で、韓国電力の負債は約145兆ウォン(約15兆9500億円)だった。しかし2023年末には205兆1810億ウォン(約22兆5700億円)に増え、わずか2年間で約60兆ウォン(約6兆6000億円)も急増した。
負債が急増した主な原因は、国際燃料費が急騰したにもかかわらず国内の電気料金が事実上凍結され、2021年から2023年の間に約47兆ウォン(約5兆1700億円)の累積営業損失が発生したためだ。当時政府は、エネルギー価格の上昇による物価圧力が強まる中で電気料金まで引き上げれば、産業界や家庭の負担が大きくなるとして値上げを最小限に抑えた。
2023年以降、世界のLNG市場が安定し韓国の導入価格も落ち着いたが、韓国電力の累積負債を減らすため電気料金の引き上げが本格化した。特に産業用電気料金は2023年以降、複数回の値上げを経て累計で約70%近く上昇した。
つまり国際燃料費の上昇は、韓国電力の負債という“緩衝材”を通して時間差で電気料金に反映された形となった。現在韓国電力は、そのとき増えた負債により1日当たり100億ウォン(約11億円)以上の利息を支払っている。
産業界では2023年以降、7回にわたる産業用電気料金の値上げが実質的な負担になっているとの声が出ている。韓国経営者総協会の調査によると、電気料金に敏感な業種では売り上げに占める電気料金の割合が2022年の7.5%から2024年には10.7%へと増え、42.7%上昇した。影響が大きい業種として半導体、鉄鋼、石油化学などが挙げられている。
一方、韓国の中東依存度は過去より低下している。
業界では、今回のイラン空爆がロシアのウクライナ侵攻時のように公企業の負債拡大と電気料金上昇につながるかどうかは、戦争が長期化するかにかかっているとの見方が出ている。
欧州のLNG価格急騰の影響はまだアジア市場に本格的には反映されておらず、政府の備蓄など対応手段もあるため、短期的な需給や価格への影響は限定的とみられている。
韓国ガス公社の関係者は「現在は在庫が十分あり、通常は夏に需給判断をするため、現時点では急騰したスポット価格で購入する必要はない」と説明した。
さらに「長年進めてきた供給源多様化の努力により、中東依存度を40%から20%まで下げた効果も出ている」とし、「今後は中東情勢の長期化や国際エネルギー価格の動向を注視する必要がある」と述べた。
エネルギー業界の関係者は「公企業の負債が限界に近づいている状況では、以前のように燃料費上昇分を負債で埋める方法はもはや持続できない、国際原油価格やLNG価格の動向を踏まえた先手のエネルギー対策と、産業界への衝撃を最小限に抑える精密な料金体系の設計が急務だ」と述べた。
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