
韓国が掲げる「年間3000万人の外国人観光客時代」に向け、2025年のインバウンド観光市場は好調に推移している。韓国観光公社が11月末に発表した統計によると、2025年10月末時点で訪韓外国人観光客は約1582万人に達し、前年同期比15.2%の増加となった。年末までの集計を含めれば、過去最高を記録した2019年(1750万人)を超える見通しだ。
しかし、観光客の国籍や地域の偏り、地方消費の不均衡といった構造的な問題は依然として残されたままであり、専門家からは「持続可能な成長に向けた体制整備が急務」との指摘が上がっている。
観光公社の分析によれば、10月までに訪韓した中国語圏(中国・香港・台湾)からの観光客は約677万人、日本からは約299万人にのぼり、両地域だけで全体の61.6%を占める。関係者は「9月からの中国ノービザ政策の影響や、日中関係の冷え込みによる“韓国へのシフト”が拍車をかけた。年末にかけて比率はさらに高まるだろう」と見ている。
一方、新たな重点市場とされる東南アジアや中東地域からの訪問者数は依然として低調だ。マレーシアやベトナムなどは前年比で1桁台の伸びにとどまり、タイに至っては0.1%増にとどまった。サウジアラビアやUAEなど富裕層を多く抱えるGCC諸国からの訪問者数も月間3000~4000人程度と限定的だ。
また、訪韓外国人による消費の約70%がソウルに集中しており、2位の仁川(7.8%)、3位の京畿道(7.1%)を合わせると84.5%に達する。これに対し、慶尚南道・江原道・忠清北道・光州などの地方はそれぞれ1%未満にとどまっている。
観光業界からは「訪問者数」そのものより、地域における観光支出や持続可能な利益構造の構築が急務だとの声が強まっている。
ある地方の観光企業関係者は「今は“数の多い客”ではなく、“よく消費する客”を呼び込む施策が求められている」と語った。日本やイタリア、スペインなど観光先進国の例を挙げつつ、韓国でも数量よりも質を重視したインバウンド政策への転換が必要だと強調した。
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