自動車の電動化傾向が加速化し、車両の空車重量(燃料や冷却水、オイルなどが規定量入っている状態の重量)問題が浮き彫りになっている。ただでさえ重いバッテリーを車両に搭載するのに、高級素材や安全・快適さを追求する観点から「重量を減らそう」という考えが後回しになりがちだ。だが、衝突事故が発生すれば、重い車体によって被害が深刻化するという指摘も出ている。
米ブルームバーグ通信などによると、米国で昨年販売された新車の平均重量は4329ポンド(1963kg)。同通信は「1980年の平均値より1000ポンド(454kg)以上増加している。またこの3年間に約175ポンド(約80kg)増えた」と報じている。
車両の重量は今後の電動化によりさらに増える。グローバル完成車メーカー「ステランティス (Stellantis)」のネッド・キュリック最高技術責任者(CTO)は、業界紙「Automotive News Europe」とのインタビューで「1トン半程度だった車が現在、3トンに迫っている。こうした傾向は環境だけでなく、資源と効率にも良くない」と指摘している。
ブルームバーグは、電動化に加え、消費者の好みの変化も背景にあるとみる。ピックアップや多目的スポーツ車(SUV)の需要が、セダンやハッチバックを上回っている。技術の発展に伴い、一部のトラックの重量は減ったものの、より大きく重いピックアップを購入する北米での需要は着実に高まっている。
◇追突事故で死亡「47%高まる」
韓国の事情も米国とあまり変わらない。韓国消費者は米国と好みが似ており、国内SUVの需要は着実に高まっている。ここにハイブリッド車と電気自動車などが含まれ、国内における新規登録車両の重量も増えている。
実際、環境省が2016~20年に調査した自動車温室効果ガス管理制度の履行実績を見ると、国内販売車両の平均空車重量は、2016年は1556kgだったが、2018年には1595kg、2020年には1622kgと増え続けている。今年は空車重量が2.5tに迫るEV9などが発売され、平均重量はさらに増えそうだ。
北米では1980年代から自動車が重くなり始めた。当時の最大の要因は安全規制の強化だった。エアバッグ、衝突試験評価、堅固な構造物によって車両はどんどん重くなった。一方で、メーカー側はより硬く、強い素材を使い、軽量化は後回しにした。
その後、完成車メーカー各社は世界的な傾向に応じて燃費を高め、炭素排出量の減少を目指し、電気自動車を発売した。
電気自動車用バッテリーは通常、450~680kgに分布している。バッテリー素材によって異なるものの、電気自動車プラットフォームにバッテリーを載せるだけでも軽く1000kgは超える。ここに安全・快適さに関わる仕様を加えれば、2000kgを大きく上回ることになる。
一方で、車両が重くなれば、事故時の被害も深刻になる。
民間団体の全米経済研究所(NBER)によると、車1台に1000ポンド(450kg)の重量が加われば、追突事故で死亡する可能性は47%高まる。これに対する警戒心として、欧州の一部の国は、重さに応じて車両に税金を課している。
ブルームバーグは「米国で自動車の安定性技術が発展したにもかかわらず、自動車事故の死亡率はこの20年で最高水準まで上がった。似たような高所得国よりはるかに悪い。車の重さは重要な要素だ」と指摘している。
◇「駐車場崩壊の危険」はないか
また、重量のため駐車場の利用が制限される場合もある。
韓国国土交通省によると、昨年8月の韓国電気自動車登録台数は32万8267台で、このうち90%を占める29万4872台が1850kgを超える。1850kgまで収容できる中型機械式駐車場を利用できる車両は3万3395台と、10%に過ぎない。電気自動車が増え続ければ、建物が受ける荷重も増加し、駐車場崩壊の危険も高まる。
業界では、完成車メーカーがカーボンニュートラルのために電気自動車を生産しながらも、より重いバッテリーを搭載することで、逆に多くの炭素を排出するという懸念も出ている。
業界関係者は「重い電気自動車は電力消耗量も大きい。電力を使えば使うほど、内燃機関車より多くの温室効果ガスを出す。大型電気自動車の大きくて重いバッテリーを作る際の鉱物消費量も大きくなるだろう」と指摘する。
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