
北朝鮮が5000トン級新型駆逐艦「チェ・ヒョン号」の進水式の際、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の娘をはじめとする高官の子どもたちを大挙して登場させ、注目を集めている。これは、いわゆる「海軍の核武装化」を象徴する場面であり、キム総書記が「未来世代の安定と繁栄を保障する指導者」としてのイメージを強調する狙いがあると専門家らは分析している。
朝鮮中央テレビが先月26日に公開した進水記念式の映像では、キム総書記が娘と腕を組み、親密に会話を交わす様子が終始映し出された。娘はこれまでも軍事関連の公式行事に何度も姿を現しており、北朝鮮内部で次世代の象徴として位置づけられつつある。
さらにこの日、キム総書記の実妹、キム・ヨジョン(金与正)党副部長も、子どもと見られる男女の2人と手をつないで登場した。キム・ヨジョン氏は今年1月の新年慶祝公演にも同じ2人を伴って出席しており、韓国国家情報院は当時「子どもたちがキム・ヨジョン氏の実子である可能性を排除せず分析中」としていた。
そのほか、キム・ドックン(金徳訓)党経済書記が孫娘と思われる女児と、パク・ジョンチョン(朴正天)党軍事委員会副委員長も孫と見られる男児と登場し、党・政・軍の高官たちがそろって家族を伴って現れるという異例の演出が見られた。
このような光景は、これまでの北朝鮮の硬直した公式行事とは異なり、あえて「社会主義大家族」を演出し、国民に親近感と未来への希望を印象付ける試みとみられている。
この日公開された「チェ・ヒョン号」は、韓国のイージス艦に相当する能力を持つと評価されており、対艦ミサイルや艦対空ミサイル、巡航ミサイルなどを搭載可能とされる。北朝鮮海軍史上最大・最先端の艦船が登場したこの記念の場に、指導層の子どもたちを伴わせることで、「未来世代のための体制の強靭さと誇り」をアピールする意図が込められていると解釈されている。
キム総書記は式典の中で「米国とその追従国は我が共和国の安全上の懸念を無視し、挑発的行為を繰り返している」と非難し、「あらゆる手段を総動員して国家の主権と安全を守る」と強調した。
韓国・慶南大学のイム・ウルチュル教授は「かつての行事は幹部たちが整然と立ち並ぶ厳格な雰囲気だったが、今回のように子どもや家族を前面に出すのは、明らかに計算された演出だ。キム総書記が祝賀ムードを盛り上げることで、未来世代に体制への自負心を植え付け、政権の正当性と持続性を強調しようとする政治的メッセージが込められている」と分析した。
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