
韓国の革新系野党「共に民主党」が憲法裁判所と大法院(最高裁)の制度に大きな影響を及ぼす可能性のある法改正を相次いで推進し、司法制度に「地殻変動」が生じるとの観測が広がっている。
国会法制司法委員会に所属する共に民主党のパク・ボムゲ議員は23日、法院組織法と憲法裁判所法の改正案をそれぞれ発議した。
法院組織法の改正案には、弁護士資格を持たない人物でも大法官(最高裁判事)として任命できるようにする内容が含まれている。現行の任命条件は、判事・検事・弁護士や、弁護士出身の公共機関法律担当者、法学教授などに限られているが、新たに「学識と徳望があり、各界専門分野で経験豊富で、法律に関する素養のある者」を追加するものだ。
また、大法官の定数を現行の14人から最大30人まで段階的に増員し、そのうち最大3分の1は非弁護士から任命可能とする案も盛り込まれている。
同日発議された憲法裁判所法の改正案では、憲法研究官の定年を現行の60歳から65歳に延長する内容が含まれている。
さらに共に民主党は5月14日に、法院の判決についても憲法裁判所が違憲判断を下せるようにする憲法裁判所法の一部改正案を、国会法制司法委員会の小委員会に付託している。これは、現行で国会が制定した法律などに限定されていた審査対象を、司法の判決にも広げる狙いがある。
こうした一連の動きについて、憲法裁に権限を集中させ、大法院の権限を分散させようとする意図があるとの見方も出ている。
特に注目されるのが「再審請求」の導入だ。これは事実上、確定判決に対する再審制度を大法院から憲法裁に移す構想であり、両機関は神経を尖らせている。
憲法裁と大法院はこれまで、限定違憲や判決取り消しを巡って長年にわたる確執を抱えてきた。憲法裁は1988年の設立以来、法律や法解釈に対する違憲判断を通じて、過去に3度、法院の判決を取り消してきたが、大法院はこれを一貫して受け入れなかった。
こうした経緯の中で、再審請求制度導入の動きが出たことで、両者の対立は新たな段階に突入したといえる。
大法院側は「事実上の四審制になる」として強く反発している。憲法裁は「違憲判断には拘束力を明記すべきだ」として歓迎の意を示しつつ、法院が従うよう法的強制力を明確にすることを求めている。
憲法裁はさらに、最近の判決取消案件である「KSS海運を巡る行政不作為違憲確認事件」を全員合議体に付託したことを異例にも公表した。この件では、KSS海運に対する課税処分を巡り、大法院と憲法裁が異なる判断を示しており、憲法裁が最終的に大法院の判決を取り消す決定を下したにもかかわらず、大法院は依然としてこれを受け入れていない。
法曹界からは、両機関の対立が激化する現状に懸念の声も上がっている。ある法学専門大学院の教授は「政治的な利害を背景にした憲法裁と大法院の主導権争いは望ましくない。国民の基本権を守るという共通目標のもと、司法制度の根本について冷静な議論を先行すべきだ」と指摘している。
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