ソウル市城北区のミアリテキサス村は、かつてソウル北部を代表する性売買集結地として知られてきた。だが、再開発に伴う建物の取り壊し期限が近づき、経済的に困窮する性労働者たちが違法な高利貸しの「三六九」に陥る事例が相次いでいる。「三六九」とは、法定金利を大きく超える利息で貸し付け、少しでも返済が遅れると高額の延滞金を課す悪質な貸し付け手法だ。例えば、30万ウォン(約3万3000円)を借りても1分遅れるごとに10万ウォン(約1万1000円)の延滞利息が発生し、支払い困難に陥る人が続出している。
ミアリで長年働く性労働者の多くは、住居や生活費を賄うためにこうした高利貸しに頼らざるを得ない。彼女たちの弱みにつけ込み、返済が滞ると「性売買をしていることを知人にばらす」と脅迫する手口が横行している。最近では、35歳の女性が違法な貸し付けによる過剰な利息に苦しみ、追い詰められて自ら命を絶つ事件が発生し、社会に衝撃を与えた。
被害者は、借金返済ができなくなると、幼稚園に通う娘の写真を含む個人情報をSNS上で公開され、友人や教師にまで「ミアリで働いている」というメッセージを送られた。これに耐えきれず、彼女は孤独のうちに命を絶った。
このようなケースは決して稀ではなく、同じように追い詰められる人が少なくない。
こうした状況を受け、ソウル市は違法貸金業者に対抗する策として、SNS上で匿名相談を受け付ける窓口の開設や、ミアリテキサス村にスピーカーを設置し、違法取り立ての通報を促す放送に取り組むことを決定した。しかし、性労働者の一部からは「匿名の相談やスピーカー放送で解決できる問題ではなく、むしろ地域の孤立が深まるだけ」と不満の声が上がっている。
女性人権センター「ポダ」のイ・ハヨン所長は「性労働者にとって、仕事をしている事実が知人に知られることは大きな恐怖になる。違法貸金業者がそれを利用している」と指摘する。被害者の一人は「銀行からの借り入れができず、違法業者に頼るしかない現実がある」と語る。
社会的孤立の中で高利貸しの標的になりやすい現状に対する警鐘が鳴らされている。
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