2025 年 7月 28日 (月)
ホーム国際農業を守れるか…米国の圧力、韓国・李在明政権の試練

農業を守れるか…米国の圧力、韓国・李在明政権の試練

2025年7月25日、ソウル・龍山の大統領府庁舎で開かれた記者ブリーフィングに臨むキム・ヨンボム(金容範)大統領室政策室長(右)とウィ・ソンラク(魏聖洛)国家安保室長(c)news1

韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権が米韓関税協議を目前に控え、農産物市場の開放をめぐって政治的リーダーシップが問われる局面に直面している。大統領府が「協議品目に農産物が含まれる」と公式に認めたことで、政界や農畜産業界では強い懸念と反発が広がっている。

大統領府によると、韓国政府は8月1日、トランプ米大統領が予告した相互関税(25%)の発動期限を前に、関税率引き下げを目指して交渉に全力を注いでいる。

焦点となっているのは、米国が要求するコメ輸入の拡大と、現在制限されている30カ月齢以下の米国産牛肉に対する輸入制限の撤廃だ。韓国政府は当初、コメと牛肉の市場開放を交渉カードから外す方針だった。代わりに、バイオエタノール用トウモロコシなど非食用作物の輸入拡大や衛生検疫条件の緩和を提示することを検討していた。

しかし、交渉の流れを変えるのは容易でない。すでに日本や英国、インドネシア、ベトナムなどは、米国との関税協議で一定水準の農産物市場開放を受け入れている。トランプ大統領もSNSを通じて、オーストラリアが米国産牛肉を輸入し、日本がコメ市場を追加開放した例を挙げ、自国の要求を明確に打ち出している。

こうしたなかで、韓国政府が米国の要求を一部受け入れる可能性も取り沙汰されている。キム・ヨンボム(金容範)大統領室政策室長は7月25日の緊急会議後、「交渉品目に農産物が含まれている」と述べた。ただし、コメについては各国ごとの輸入枠(クォータ)が定められているため、当面は米国のみの割当増加は難しく、牛肉、リンゴ、ジャガイモ、トウモロコシなどが主な交渉対象とみられている。

こうした動きに、政界や農民団体の反発は激しさを増している。仮に農産物市場が一部でも開放されれば、政治的・社会的な反発は避けられない。与野党ともに、農業を「通商交渉の犠牲」にするなという姿勢を明確にしている。

与党「共に民主党」の農林畜産食品海洋水産委員会所属議員らは7月26日の共同声明で「農業を通商協議の犠牲にしようとする状況に深い遺憾を表する」と強く反発。野党「国民の力」も24日に農民団体との緊急懇談会を開催し、「農業と畜産業を一方的に犠牲にする協議は許されない」と圧力をかけた。

農民団体も次々と抗議の声を上げている。韓国後継農業経営人中央連合会は7月16日に大統領府前で記者会見を開き、「農業を交渉の犠牲にするなら集団行動も辞さない」と警告。韓国農畜産連合会など複数の団体も18日に「農業従事者の同意なく関税や非関税障壁を撤廃するなら看過できない。闘争に突入する」と宣言していた。

(c)news1

RELATED ARTICLES

Most Popular