2025 年 12月 18日 (木)
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警察官の負傷、韓国では“自己責任”…米仏などの国家が回復と復職まで全面支援

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米国やフランスなどの主要先進国では、勤務中に負傷した警察官に対し、国家が医療費の全額負担から復職までを一貫して支援する制度を整えている。身体的な傷害だけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など精神的な被害にも手厚く対応しており、治療・再適応に向けた包括的なリハビリ支援が充実している。一方で、韓国では負傷警察官が治療費を自費で負担せざるを得ないケースが多く、制度面の遅れが深刻だ。

米国では州によって制度に違いはあるが、警察官が負傷した際には理学療法や手術、PTSDへのカウンセリングも支援対象となる。また、軽度の業務に配置換えして復職を促す制度も導入されており、給与を維持しながら回復を図ることができる。例えばテキサス州では、一時的な障害状態の警察官に対し、少なくとも1年間の軽作業への配置が認められている。

さらに、カリフォルニア州やイリノイ州シカゴなどでは、勤務中の負傷によって業務が不可能になった場合、最大1年間給与の全額を保障する制度もある。

フランスでは、警察官が負傷した場合、その治療費はすべて国家が負担し、治療期間中も給与が100%支給される。加えて、職業リハビリ訓練や心理的・身体的な回復を支援するシステムが整っており、元の業務に復帰できない場合は、他の業務への再教育プログラムも提供されている。さらに、国家公務員の社会福祉を担うANAS(フランス国家行動社会協会)は、警察官向けに専門的な医療・心理リハビリプログラムを運営している。

このように先進国では、科学的根拠に基づいて警察官の職務上の健康リスクを研究し、制度に反映させている。イギリスでは2004年から5万人以上の警察官を対象とした大規模調査を実施し、業務で使用する無線機の影響などを長期的に追跡。米国では2011年の研究で、警察官の非ホジキンリンパ腫発症率は一般労働者の3.34倍、脳腫瘍は2.92倍に上ると分析された。カナダの2021年の研究でも、前立腺がん(1.47倍)、大腸がん(1.39倍)、悪性黒色腫(2.27倍)などが一般人よりも高い頻度で見られたと報告されている。

韓国でも、警察官が勤務中に夜勤や交代勤務、ストレス、暴力への対応などで健康リスクに常時さらされていることは以前から指摘されてきた。特にラジオ波、紫外線、超微細粉塵、ディーゼル燃焼物質、多環芳香族炭化水素(PAHs)などの発がん物質への長期曝露ががん発生率の上昇と関連しているとされている。

精神的な影響についても、2023年に台湾で実施された研究では、家庭内暴力の対応など高リスクな任務に繰り返し関わることで、警察官が深刻な心理的ダメージを受ける可能性があると報告されている。

一方で韓国では、公務上の傷病(公傷)の認定範囲が狭く、業務との関連性を自ら立証しなければならないなど、負傷警察官への制度的支援が不十分である。リハビリ制度や軽作業配置も整っておらず、治療の道を断念して退職を選ぶ警察官も少なくない。

警察官に対する社会的な認識も制度に影響を与えている。米仏などでは警察官を「社会秩序を守るための重要な人的資産」として扱い、その健康と安全の確保が国家の責務とされているが、韓国では依然として「個人の問題」と見なされる風潮が根強い。

専門家らは「警察官の負傷は国家・社会の安全のために発生した公的な損失であり、それを国家が支援するのは当然である」と指摘する。

順天郷大学警察行政学科のキム・ヨンシク教授は「フランスは警察や消防などの公権力を敬意を持って遇している。国家が財源を確保し、福祉財団などを通じて負傷警察官と遺族が安定した生活を送れるよう制度的基盤を整備している」と述べた。

また、東国大学のキム・ハクジュ教授も「韓国では、公傷の認定で業務関連性を証明する負担が個人に大きく、手続きも複雑で長期化する。PTSDの認定範囲も狭く、実質的な心理的リハビリ支援も不十分だ」と指摘。「欧州では単なる補償よりも回復と復職を重視したプログラムが整備されており、危険職務に従事する人が安心して働けるためには、そうした再適応制度が不可欠だ」と強調した。

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