現場ルポ
メタバースの仮想不動産を支配するのは「サンドボックス」(Sandbox)だ。「96メートル×96メートル」を1パーセルと規定する。同社の仮想不動産規模は16万6464パーセルで、価格はイーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンの仮想通貨「イーサ(Ether)」で計算されている。昨年12月には1パーセル当たり1万2700ドルで売れた。
「ディセントラランド」(Decentraland)は、1パーセルを「16メートル×16メートル」とし、これを計9万600パーセルをつくり、各パーセルを1万4440ドルで販売した。ディセントラランドの仮想不動産価格も同様にイーサで設定されている。
メタバース仮想資産投資諮問会社「リパブリック・レルム(Republic Realm)」によると、サンドボックスはメタバースプラットフォーム「ビッグ4」が提供する仮想不動産の64%を占める。仮想不動産の販売市場でも同社は全体の4分の3と、市場を支配する。リパブリック・レルムも最近、サンドボックスから430万ドル規模の仮想不動産を購入した。
サンドボックスは、独自のビラとボート・ジェットスキー市場を保有する100の島を開発する「ファンタジーアイランド」プロジェクトを進めている。すでに100島のうち90島が分譲初日に売れた。1島当たりの分譲価格は1万5000ドルだったが、現在、一部の島が10万ドル以上の価格で売りに出されている。
メタバース内の仮想不動産への投資に対する警戒感は依然高い。「仮想空間」であるメタバースは「虚構」にすぎず、その中の仮想不動産が実際の土地の特徴である希少性を持っていないという理由からだ。毎週のように新たなメタバースプラットフォームが登場していることも問題点として上げられている――CNBCはこう指摘する。
実際の土地は建物を建てるなどして、有効面積を広げることはできるが、土地をさらに作り出すことは不可能だ。だが、メタバース内では、無制限の拡張が可能なため、仮想不動産の価値が下がりかねないという分析だと読める。
米インディアナ大メディアスクールのエドワード・カストロノヴァ教授はメタバース不動産販売を「無限連鎖講詐欺と同じだ」と断言する。
「メタバースはインターネットのスタートアップのためのエル・ドラード(黄金郷)のようだ。エル・ドラードを探しに出た人たちのように、仮想不動産の投資家も密林の中で迷い、命を落とす可能性がある」
こうした指摘に対し、仮想不動産投資の楽観論者は「時代遅れの古い投資者の見方」「若い消費者と投資者はメタバースの魅力にすでに魅了されている」と反論する。
メタバースなどに投資する「トークンズ・ドットコム」(Tokens.com)のアンドリュー・キゲルCEOは「若い世代はデジタル化された物に価値を付与することを問題視していない。ブロックチェーン技術で希少性が保障されるNFTのようにメタバース仮想不動産も固有の希少性を持つ」と主張している。
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