キム・ウンヒョンさん(24)は、高校時代に目の前が真っ暗になった記憶がある。1年生のとき担任が学期中に突然学校を辞め、そのクラスの生徒の学生生活記録簿(生記簿)が、空白になりそうだったのだ。
「担任が辞めたのが、よりによって生記簿を記録する週間であり、後任の先生は生記簿記録期間であることも知らなかった。その期間に記録しなければ問題が生じるのに、基本的な日程も知らずにいてクラスの生徒は皆、生記簿を受け取れないところだった」
キムさんはこう振り返った。
青年層の間で公職の人気が下落したのは、単に人気の変化にとどまらない。社会行政・福祉サービスの基礎を担当する人々の能力が低下すれば、その被害はそのまま国民に回ることになる。公共サービスの質の低下は、既に社会のいたるところで観察されている。
公職の中で教師は高い雇用安定性と社会的地位で過去には羨望される職業だったが、相次ぐ教権(教員の権威)侵害、低賃金などで人気は落ちている。
◇深刻化する福祉分野
国民生活と接する社会福祉サービス分野の問題も深刻だ。社会脆弱階層の場合、福祉の空白期間はややもすれば生存問題につながりかねない。しかし、現場では過重な業務量のために離脱する人材が多く、それによって残された人々の業務はさらに増えるという悪循環が生じている。
社会福祉公務員になって7年目のソさん(33)は「単純な補助金や物品の支給から一歩進み、脆弱階層が自立できるよう支援する『事例管理』という業務を社会福祉公務員が担当している。しっかりと支えるためには公務員1人が担当する基礎生活(日本の生活保護に相当)受給者は10人前後が適当だが、実際には200~300人に達する時もある」と明かした。
さらに「そうでなくても福祉公務員の業務が過重なのに、これまで一般福祉館で担当していた事例管理業務まで加わるので、周囲には辞める人や休職して戻ってこない同僚が多い。現実的に不可能な仕事量に苦しめられ、業務の処理が形式的にならざるを得ない」と指摘する。
社会福祉公務員のキムさん(24)は「公務員になりたてのころ、ある住民センターに配属されて退職者の業務を引き継ぐことになったが、誰も引き継ぎをしてくれなかった」と話し「その間、脆弱階層に提供されるバウチャー申請案内メールの発送が一部抜け落ち、申請を適時にできなかった人に激怒されたことがある」と明かした。
◇警察の場合
警察も人材問題がネックとなるのは同じだ。ソウル市内のある地区隊長は「警察は大部分が2人1組で勤務するので、円滑に回すためには少なくとも8人が必要だ。しかし、それに及ばないのが現実だ」と言い「事件が一度にたくさん入ってくると、人材もパトカーも不足して処理が遅れる。それによる抗議まで加わり、ストレスが並大抵ではない」と明かした。
国民が感じる公共サービスの質の低下は、オンライン政府民願ポータルサイト「国民申聞鼓」に受理された苦情件数の増加からもうかがえる。国民権益委員会(権益委)によると「国民申聞鼓」の苦情件数は2017年に310万件、2018年は274万件だったが、2019年は800万件、2020年は957万件、2021年は1327万件、昨年は1071万件と、5年間で3倍以上となった。
権益委が2年前に導入した「積極行政国民申請制」と「消極行政再申告制」による苦情もある。法令不備または不明確などにより発生した公益的問題の解決を申請したり、一度「消極行政」で申告したが結果が不満足な場合に再び申告したりする制度だ。積極行政は専門性を備えた公務員が積極的に業務を処理する行為をいい、消極行政は公務員の不作為などの概念だ。
権益委によると、積極行政国民申請の受付件数は制度が導入された2021年7月27日からその年末まで1666件、2022年3267件、今年は5月までに1638件が受け付けられた。消極行政の再申告受付件数は昨年4439件だった。
(つづく)
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