2024 年 12月 25日 (水)
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衝撃広がるソウル地下鉄駅ストーカー殺人

16日午後、新堂駅で女性駅員を殺害したとして逮捕された容疑者©news1

韓国ソウルの地下鉄駅で、女性駅員をストーキングしていた男がこの女性を殺害するという事件が起き、韓国社会に衝撃が広がっている。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領はこの事件を重く受け止め、再発防止策を政府に指示するなど対応を急いでいる。

◇繰り返しストーカー行為

事件が起きたのは今月14日。午後9時前、ソウル地下鉄2号線の新堂(シンダン)駅で、構内を巡回していた女性駅員(28)が女子トイレの見回りに入ったところ、凶器を持った男に襲われ、間もなく死亡、通報を受けて駆け付けた駅員らが男を取り押さえた。

男はソウル交通公社職員(31)で、殺人容疑で逮捕された。女性駅員と男は2018年の入社同期。同じ職場での勤務経験はないという。

男は2019年からストーキング行為を始め、300回以上電話をかけたりメッセージを送り付けたりしたという。昨年10月、男は女性駅員を違法に撮影・脅迫したとして、性暴力処罰法違反容疑で緊急逮捕された。ただ、この時、裁判所は「証拠隠滅や逃亡の恐れがない」としてこう留を認めなかった。

警察は1カ月間、女性の身辺を保護したものの、特異事項がないうえ、女性も延長を望まなかったため、保護を終了した。

ところがその後、男が繰り返し女性に接触を要求してきたことから、女性は今年1月、ストーキング処罰法違反容疑で男を告訴した。これを受け、男は在宅起訴され、今月15日にはその一審判決を控えていた。

事件当時、男は凶器を準備したうえ、女子トイレの近くで1時間以上、女性駅員を待ち伏せしていたという。警察の調べに対し、男は「かなり前から犯行を計画していた」と供述しており、警察は「女性駅員への逆恨み」が動機とみている。

16日午前、記者団の質問に答えるユン・ソンニョル大統領©news1

◇ユン大統領「被害者保護に万全を期す」

韓国では昨年10月、「ストーキング犯罪の処罰等に関する法律」が施行されている。ストーカー行為に対して、警察は容疑者に警告や禁止命令などの措置を取ると規定されている。ただ、法律施行後もストーカー事件は増加傾向にあり、警察が認知したストーカー事件は昨年11月には277件だったのが、今年3月には2369件に急増している。

ストーカー行為の増加を受け、法務省は先月、ストーカー行為で懲役刑を受け、再犯の危険性の高い行為者の足首に、全地球測位システム(GPS)機器のついた足輪を装着させて行動を監視できるよう法律を改正する方針を掲げてきた。

今回の事件では、ストーカー行為が繰り返され、凶悪犯罪の兆候があったにも関わらず、女性駅員と男を引き離す措置が適切に取られていなかったようだ。

ユン大統領は16日、記者団に対し、「今回のストーキング殺人事件が国民に大きな衝撃を与えている」と述べたうえ、「このような犯罪が2度と起きないよう、被害者保護に万全を期するよう法務省に指示した」と明らかにした。

16日午前、新堂駅に設けられた追悼空間を訪れた市民ら©MONEYTODAY

◇「何の措置も取られず、怖い」

事件を受け、新堂駅の女子トイレ前と10番出口前には、女性駅員の追悼所が設けられ、「女性が安全な世の中を。これ以上の犠牲はあってはならない」などとメッセージが記されていた。

追悼所に菊の花を捧げていた公務員、イ・イェスルさん(34)は「女性駅員がストーキング被害を訴えているのに、警察も職場も何の措置も取らなかった。怒りがこみ上げます。江南駅殺人事件の追悼にも行ったが、あの時と変わったことが一つもない」と憤った。

韓国では2016年5月にソウルの繁華街の女子トイレで、20代の女性が面識のない男性に殺害された「江南駅殺人事件」が発生している。女性を狙った無差別殺人に対し、草の根的に追悼の動きが広がり、現場近くの江南駅に追悼の場が設けられている。

今回の事件について、イ・イェスルさんは「十分に防げる犯罪だったと思う。女性駅員がストーキングを訴えていたのだから、ソウル交通公社は女性の勤務状況を確認できないようにし、積極的に身辺保護をすべきだった」と話している。

10番出口前の追悼空間を訪れたチュさん(30)は、そこに貼られたメモを眺め、なかなか立ち去ることができなかった。「同じ女性なので、私にも起こり得ること。なのに、何の措置が取られなかったということが一番怖い。社会が変わらなかったと考えると、とても息苦しい。涙も出る」と話した。

©news1、MONEYTODAY

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