「K-POPのゴッドファーザー」と呼ばれるイ・スマン氏が興した韓国大手芸能事務所「SMエンターテインメント」をめぐり、人気グループ「BTS(防弾少年団)」などを抱える「HYBE(ハイブ)」と、韓国インターネット大手「カカオ」による株式の争奪戦の火蓋(ひぶた)が切られようとしている。今回の「大戦争」で、K-POP業界の本格的な「合併・買収(M&A)ラッシュ」が始まるとの見方が出ている。
K-POP業界では、今年の世界景気はさらに低迷し、デビュー時から世界を見据えるK-POP界も打撃をこうむる可能性があるとみられている。
このため、HYBEやカカオのように企業運営に「グローバルスタンダード」基準を持つ規模の大きいエンターテインメント会社だけが持ちこたえたり、さらに成長したりするという分析もある。
◇不透明な経営構造
K-POPを開拓したSMは大きな会社だが、イ・スマン氏のいわば1人プロデュースシステムの下、彼の個人会社「ライク企画」が相当な利益を持っていく不透明な経営構造が問題となり、危機を迎えた。
行動主義ファンドであるアラインパートナーズがこのすきまに入り込み、イ・ソンスとタク・ヨンジュンのSM共同代表が、イ・スマン氏に反旗を翻すことになったのだ。そのようなSMの不安定な状況の中に大量の「実弾」を保有するカカオとHYBEが新たに参入。結局、SM現経営陣はカカオと、イ・スマン氏はHYBEと手を組むことになった。
SMの筆頭株主であるイ・スマン氏の持分14.8%(352万3420株)を4228億ウォンで買収することにしたHYBEが今度は筆頭株主になり、SM買収に有利な状況だ。だが、カカオがHYBEと公開株式買付を繰り広げる可能性もある。
◇攻撃的M&A
カカオの子会社カカオエンターテインメントは最近、サウジアラビアの国富ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)とシンガポール政府系投資ファンドGICからそれぞれ6000億ウォンずつ計1兆2000億ウォン相当の投資を誘致した。一方、HYBE系列の米ヒップホップレーベル「QUALITY CONTROL MUSIC」、HYBEの資金余力が多くないため、系列会社から3200億ウォンの短期借入金を調達した。
かつて、エンターテインメント業界で攻撃的な合併・買収(M&A)に真っ先に乗り出したのはSMだった。2012年に韓国新興市場のコスダック上場だった旅行会社BT&Iを買収し、社名を「SM C&C」に変更。放送コンテンツ事業の拡大に本格的に乗り出した。さらに、「SM C&C」はこの年、俳優チャン・ドンゴンが設立した企画会社「AMENT」を買収した。翌年には放送コンテンツ製作業者と、当時人気グループだった「INFINITE(インフィニット)」などが属した「ウリム・エンタテインメント」も吸収合併した。
2018年には当時、国内最大の俳優マネジメント会社であり韓流スター、ペ・ヨンジュンが設立した芸能事務所「キーイースト」とドラマ・芸能製作会社である「FNCアドカルチャー」も買収。その後、モデルエージェンシーの「エスチーム」、ユン・ジョンシンの所属事務所「ミスティックエンターテインメント」にも投資。SKプラネット広告事業部門(M&C)も買収し、事業領域を拡大した。
◇イサカ・ホールディングス買収
HYBEとカカオエンターテインメントも同様に、他社を買収して規模を拡大した。パン・シヒョク議長が率いるHYBEは、SEVENTEEN(セブンティーン)のPLEDISエンターテインメント、GFRIEND(ジーフレンド)のSOURCE MUSIC、ラッパー兼プロデューサーのジコのKOZエンターテインメントなどを買収した。特に、一昨年には世界的なポップスターであるジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデらが属した米芸能企画会社イサカ・ホールディングスを買収し、世界のエンターテインメント業界を驚かせた。
(つづく)
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