2024 年 11月 30日 (土)
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船長のいないAI「ボート」に乗ってみたら…

  現場ルポ  

記者が搭乗したAVIKUSの自律運航船©MONEYTODAY

韓国・仁川(インチョン)の旺山(ワンサン)マリーナ。そこで、現代重工業グループの自律運航船専門会社「AVIKUS(アヴィクス)」のプレジャーボートには船員を含め8人で搭乗した。

マリーナには数十台の船が停泊し、混雑している。だが、誰も操縦キーを握っていない。

目的地を入力すると、AVIKUSのプレジャーボートは人工知能(AI)が案内する最適の経路に沿って、他の船を避けながら海に進んだ。

運航中、大きな船にぶつかりかけると、方向を変えたが、また、元の経路に戻った。数字さえ入力すれば、速度まで自由自在に調節できる。

港に無事戻ると、プレジャーボートは停泊まで自ら完了させた。

今月12日に開催された「AVIKUS」の自律運航船試乗会では、商用化を控えた自律運航技術を垣間見ることができた。

「AVIKUS」は「バイキング」の語源である「AVVIKER」に由来する。現代重工業グループ社内ベンチャー1号として2020年12月にスタートした。先端航海補助、自律運航ソリューション分野をリードする企業として、恐るべき成長を遂げている。

AVIKUSに搭載された人工知能が、障害物を表示しながら最適な経路を案内している©MONEYTODAY

この日試乗した10人乗りプレジャーボートには、2段階の自律運航技術が使われている。国際海事機関(IMO)は自律運航を次の4段階に分けている。

▽第1段階:船員の意思決定を支援するレベル
▽第2段階:船員が乗船した状態で遠隔制御するレベル
▽第3段階:船員なしで遠隔制御するレベル
▽第4段階:船舶を自ら運航するレベル

1~3段階を部分的自律運航、4段階を完全自律運航と分類している。

AVIKUS・NAS2.0システム©MONEYTODAY

第2段階の自律運航は目的地を入力すれば、経路を描き、それに合わせてシステムが制御する。

最適な経路には、水深情報や漁民の網など障害物まで表示される。運航中に障害物が出てくれば、自動的に認識し、ボートが自ら避ける。デバイスさえあれば、操縦席まで行かなくても遠隔操縦が可能で、ハンドルに触れると直ちに手動転換となる。

ここには、AIが船舶の状態と航路周辺を分析し、拡張現実(AR)によって乗務員らに知らせる「NAS」、船舶の離・接岸を支援するシステム「DAS」――などの最先端技術が使用されている。

AVIKUS・DAS2.0を使って船に接岸している©MONEYTODAY

NASには、AI自らがデータを蓄積しながら学習する「ディープラーニング」技術が適用されている。

船員が船舶のセンサーで障害物を発見できなくても、システムが自動探知して衝突を防止し、座礁の危険を警告する。

DASは船舶後部に設置される4台のカメラを使って、船舶の周囲状況をトップビュー(Top View=上から見た様子)形式のリアルタイム映像で表し、船舶の離・接岸時や狭い航路での衝突事故を防止できる。またAIによる船舶間の距離や船舶の速度などの情報も分析・提供する。

AVIKUSは昨年6月の段階で、慶尚北道(キョンサンプクド)浦項(ポハン)運河で12人乗りクルーズ船を、人手に頼らず完全自律運航することに成功した。これをもとに、今年6月には世界で初めて、大型船舶の2段階自律運航による太平洋横断に成功した。

AVIKUSは下半期には2段階の自律運航技術「HiNAS 2.0」を使った大型船舶を世界で初めて商用化する。来年は自律運航プレジャーボートを商用化するという目標を掲げる。

©MONEYTODAY

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