
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が中国の「戦争勝利80年記念行事」(9月3日)に出席するのは極めて異例だ。最高指導者の権威を理由に多国間舞台を避けてきた北朝鮮が出席を決断した背景には、中国の経済的支援の約束があるとの見方が出ている。
北朝鮮の最高指導者が各国首脳が参加する国際行事に出席するのはキム・イルソン(金日成)主席以来。特に近年はロシアとの接近に注力し、中朝関係は相対的に距離が生じていたとされるだけに、その決断の意味は大きい。
専門家は、北朝鮮が中国の経済的約束なしに動くことは考えにくいと指摘する。ロシアからの軍事・経済的支援はあったものの、北朝鮮経済は依然として国連制裁や日米などの独自制裁で大きく制約されている。2012年時点での対中依存度は96.7%に達していたとされ、北朝鮮経済が生き残るためには中国との関係修復が不可欠だからだ。
特に観光分野での協力が焦点になるとみられる。国連制裁では「まとまった現金」の北朝鮮流入は禁止されているが、個人旅行の実費支払いは制裁違反とされない。今年完成した元山葛麻海岸観光地区をキム総書記が前面に押し出していることもあり、中国人観光客の大規模誘致は有力な経済支援策となる。新型コロナ拡大前の2019年には年間最大30万人の中国人観光客が訪朝したと推定されている。
韓国・国家安保戦略研究院のヤン・ガプヨン首席研究委員は「最高指導者が動いた以上、当然、見返りがある。中国人観光客1万人が1回の訪朝で計1000万ドルを消費すれば、北朝鮮にとっては極めて大きな収入源となる」と指摘した。
また経済面に加え、米中間の外交的駆け引きにおいて中国が北朝鮮を「緩衝地帯」として活用し、トランプ米大統領の対北朝鮮関心を梃子にする可能性もあるとの見方もある。中国も米国との関係改善が必要な状況であり、北朝鮮を介した外交カードを切る余地があると分析されている。
(c)news1