
トランプ米政権が発足して以降初めての米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(FS)2025」が20日終了した。今月10日から10日間にわたり実施された今回の訓練は、北朝鮮とロシアの軍事協力など変化する国際情勢に対応し、韓米両軍の相互運用性を強化することを目的とした。
だが、訓練に先立つ韓国空軍の抱川での戦闘機による誤爆事故や、陸軍による無人機とヘリコプターの衝突事故など、相次ぐ軍内部の事故は残念な点として指摘されている。
北朝鮮は今回の訓練を「北侵演習」と非難しながらも、ロシア・ウクライナ戦争の休戦や終戦協議といった差し迫った課題を意識し、直接的な軍事挑発は控える姿勢を見せた。
今回の訓練は、北朝鮮軍のロシア派兵に伴う戦術変化や北朝鮮の核脅威の高度化など、最新の情勢を反映したシナリオで実施された。陸・海・空に加え、サイバーや宇宙領域までを網羅する合同野外機動訓練も拡大して進められた。
両国は今回の訓練が第2次トランプ政権発足後初のFSであることを強調し、同盟強化と両軍の運用体制の向上を目指すと意気込んだ。しかし、FS直前に実施された統合火力訓練でKF-16戦闘機が民間地域に誤爆する事故が発生し、韓国軍の全ての実弾射撃訓練が一時中断されるなど、訓練序盤からつまずいた。
さらに、17日には京畿道楊州の陸軍航空大隊で、偵察用無人機が着陸中に進路を逸れ、駐機中の多目的ヘリコプターと衝突。両機とも全焼する事故が発生した。事故原因は現在も調査中だが、人為的ミスの可能性も指摘されている。
これらの事故がFSの全体的な進行に決定的な影響を与えたわけではないが、韓国軍の小火器や地上・海上の共用火器、戦車・砲兵の実弾射撃訓練が縮小または中断され、航空機動訓練にも一部支障が生じたことで、今年の訓練成果は例年よりも低調だったとの評価もある。
さらに、これらの事故は外部要因ではなく、軍内部の管理不足が原因とされ、士気の低下を招いたという批判も出ている。
北朝鮮は、これまでのFS訓練時とは異なり、実際の軍事行動よりも「口撃」による非難宣伝に重点を置いた。
訓練開始の約1週間前である4日、米原子力空母カール・ビンソン(CVN-70)が釜山港に入港すると、キム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は「米戦略資産の朝鮮半島展開が常態化している」と非難し、「われわれも力による抑止行動の選択肢を真剣に検討する」と警告した。
また、訓練開始の2日前にはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が、北朝鮮版戦略核潜水艦(SSBN)である「核動力戦略誘導弾潜水艦」の建造現場を視察したことが公開され、一時は北朝鮮がFSを利用し核能力を誇示する軍事挑発に出るとの観測もあった。
しかし、北朝鮮は訓練初日の10日に、黄海北道で射程300km以下の近距離弾道ミサイルを発射したのみで、これ以上の挑発はなかった。CRBM発射は、短距離弾道ミサイル(SRBM)や中距離級以上の弾道ミサイル発射に比べ、米韓両国が「重大な挑発」と見なさない水準の軍事行動にとどまる。
こうした北朝鮮の自制は、対南挑発よりも優先すべき課題があるとの判断によるものと見られている。具体的には、ロシア・ウクライナ戦争への軍派遣によって「直接当事者」となった状況下で、米国主導による停戦・終戦協議が急速に進んでいる。米ロが「核軍縮」を議題とする核不拡散協議もテーブルに上る中で、北朝鮮の核交渉の行方にも複雑な影響が及ぶため、南北問題は後回しになったという分析が出ている。
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