北朝鮮が30日、太平洋グアム一帯まで攻撃できる中距離弾道ミサイル(IRBM)級ミサイルを発射した。これにより、北朝鮮が先日予告した「核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の凍結撤回」の可能性が一層高まったという指摘が出ている。
一部では、米国との覇権競争の中で北朝鮮の武力示威を容認している中国の「ビッグピクチャー」が反映されたのではないかという観測も出てきている。
韓国合同参謀本部によると、北朝鮮は30日午前7時52分ごろ、慈江道(チャガンド)一帯から日本海に向けてIRBM級ミサイル1発を高角度の「ロフテッド軌道」で発射した。飛行距離は約800キロ、高度は約2000キロ、最高速度はマッハ16(秒速5.44キロ)と探知された。
「ロフテッド軌道」とは、ミサイルの飛行距離を縮めるために、わざと発射角度を上げることをいう。したがって、このミサイルを正常角度(30~45度)で発射した場合、飛行距離はさらに伸びることになる。
このため、北朝鮮が同日発射したミサイルも、正常な角度で発射した場合は4500~5000キロ台の射程距離を記録するという観測が出ている。北朝鮮の今回のミサイル発射に「米国牽制」という戦略的メッセージが込められているという解釈が出ているのもこうした理由からだ。
北朝鮮がIRBM級以上のミサイルを発射したのは2017年以降初めて。今年に入って北朝鮮は、7回も武力示威カードを取り出した。このうち自称「極超音速ミサイル」をはじめ、30日のIRBM級まで弾道ミサイルを発射したのは6回。国連安全保障理事会は、弾道ミサイル技術を活用した北朝鮮のすべての飛翔体の発射を禁止している。
それにもかかわらず北朝鮮はこれに反して「マイウェイ」を続ける。北朝鮮が、核実験や米本土への打撃が可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の再開を実際の行動に移す可能性が高まっている。
北朝鮮のこうした動きは結局、「中国の容認があってこそ可能だ」というのが北朝鮮専門家の一般的な見方だ。
中国は今月11日、北朝鮮が極超音速ミサイルを発射した際、「関連各国は過度な反応を自制すべきだ」と主張し、北朝鮮が核・ICBM実験モラトリアム解除を示唆したところ、「制裁と圧迫だけで朝鮮半島問題は解決されない」として米国側に責任を転嫁した。
中国はこの間、米国主導の国連制裁追加の動きにも“ブレーキ”をかけた。北朝鮮のミサイル開発関連物資調達などに関与した北朝鮮国籍の5人を安保理制裁対象者リストに追加しようという米国の提案を拒否したのだ。
北朝鮮の今年の相次ぐミサイル発射と関連して2度開かれた安保理会議でも、北朝鮮に対する安保理レベルの非難声明が出なかったのも、中国とロシアの動きが背後にあるという。
中国とロシアは昨年9~10月、北朝鮮の極超音速ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)試験発射時に招集された安保理会議でも、安保理レベルの共同対応に難色を示した。
中国がこうした立場を取る背景には、中朝関係を米国牽制に活用しようという意図が含まれていると分析されている。中国が来月4日の北京冬季五輪の開幕を控えているにもかかわらず、北朝鮮はこれを気にせずミサイル発射を続けている。中朝間に暗黙の協議があった可能性が提起されている。
梨花(イファ)女子大北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は、中国の北朝鮮のミサイル発射容認には「中国側が北朝鮮に対する自らの役割がどれほど大きいかを米国に見せつけようという意図が込められている」とみる。「米国が中国と敵対した場合、北朝鮮も、米国の安全保障を脅かすミサイルを開発できるというメッセージを送った」と解釈した。
統一研究院のホン・ミン研究委員は「北京五輪の大会期間中には北朝鮮が戦略兵器を“発射”するより、開発過程を見せるか、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が軍事部門を現地指導する方式で見せる可能性がある」と予想している。
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