米政府が韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)次期大統領の「クアッド(QUAD)」(日米豪印4カ国の協力枠組み)加入の公約と関連して、異なる2つのニュアンスに解釈できる立場を明らかにし、関心を集めている。
米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、米国務省は19日、ユン次期大統領のクワッド加入公約に関する質疑に「ユン次期大統領とともに気候変動、新型コロナウイルス感染大流行、供給網を含む主要グローバル課題に対する協力を深めることを期待する。現在まで、クワッドには外部の友好国との協力のための手続きができていない」と答えた。
クワッドは、バイデン政権が「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)戦略の実現を目指すとともに、中国の域内影響力拡大をけん制することに主眼を置いているとみられる。
特にユン氏は候補時代「韓国のクワッド傘下ワーキンググループへの参加、今後の正式加入」を公約して、最近では次期大統領としてクワッド4カ国の首脳と相次いで通話し、各国との協力拡大に対するコンセンサスを形成している。
こうした中、米国務省が「クワッドには外部の国との協力のための手続きがない」という立場を示したことから①クワッド拡大の意思がない②関連手続きがないため、いつでも協力が可能――という異なる解釈が出ている。
梨花(イファ)女子大のパク・ウォンゴン教授は「バイデン政権は初期と違い、現在、クワッドを拡張する考えがないようだ。その代わり英豪との安全保障協力の枠組み『AUKUS(オーカス)』の拡大や、アジア各国などと検討中の『インド太平洋経済枠組み(IPEF)』に集中する可能性が高い」と見通している。
実際、米国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は昨年5月、従来のクワッド諸国とともに韓国を取り上げ、「(クワッド参加の)扉が開かれている」と述べる一方、その5カ月後の昨年10月には、クワッドが「非公式の集まり」であることを強調して「今すぐ拡大する計画はない」という立場を明らかにしている。
一部では、クワッドの一員であるインドが、最近、ロシアのウクライナ侵攻を非難しないなど「一糸乱れぬ行動」を見せていないという点で「米政府がクワッド拡大に躊躇しているようだ」という解釈も出ている。
つまり、米政府はクワッドのような「緩い」形態の協議体よりは、今後、安全保障(AUKUS)や経済(IPEF)など、その存在目的が明確な同盟・友好国間の協力体を充実させることに集中する可能性があるという観測だ。
IPEFの場合、▽貿易の円滑化▽デジタル貿易▽供給網の安定性▽インフラの協力▽脱炭素クリーンエネルギーの協力――などを主要な協力分野として提示している。いずれも中国との「衝突」が予想される分野だ。
一方、クワッドについて「『現在、外部国家との協力に関する手続きがない』ということについては、今後こうした手続きを定めることができるという意味に解釈する余地もある」という理由から、韓国の参加を通じたクアッド拡大の可能性はまだ残っているとの観測も出ている。米外交問題評議会のスコット・スナイダー上級研究員は「韓国がクワッド参加を決定してもしなくても、韓国が引き続きクワッドと緊密に連携し、クワッド関連の懸案に積極的に声を出すことがより重要だ」と指摘している。
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