韓国で、来年の商用化を控えた都市型航空交通(UAM)プロジェクトに、鳥との衝突リスクへの懸念が高まっている。特に、済州航空機の事故原因が鳥衝突によるものと推定されている中で、首都圏で実証実験が進められるUAMが、主要な渡り鳥の生息地と重なる問題が指摘されている。
ソウル市は2030年のUAM商用化を目指し、今年上半期から汝矣島や漢江沿いで実証実験を開始すると発表した。2035年以降には、金浦空港~汝矣島~蚕室~水西など、漢江全域をカバーする運行計画も示している。
この計画が進めば、板橋~光化門間25kmを約15分で移動でき、蚕室~仁川国際空港間も25分で到達可能となる。国土交通省もUAM専用の垂直離着陸場「バーティポート」を設置するため、2035年までにUAM対応型の建物1万棟を整備するロードマップを打ち出している。
しかし、UAMの安全性については、具体的な対策が欠如しているとの指摘がある。昨年11月、国土交通省は全羅南道の高興に続き、首都圏のアラベッキルをUAM実証事業区域に指定した。だが、アラベッキルは首都圏最大の渡り鳥生息地でもある。
ソウル市や国土交通省は、バーティポートが都市内に位置するため、鳥の群れとの衝突リスクは低いと見ているが、韓国航空航行学会の研究では、都市部でのUAM運行は航空機よりも鳥衝突の危険性が高いとされている。現在のところ、生肉を用いた模擬衝突試験が唯一の試験方法に過ぎず、関連研究は進んでいない状況だ。
昨年の国土交通技術展では、鳥衝突を想定した試験装置が公開された。この装置は、圧縮空気を利用して鶏肉やゼラチンを射出する仕組みだ。試験結果については明らかにされていない。
首都圏のUAMルートには4カ所の渡り鳥生息地が含まれる可能性が高い。このため、鳥衝突リスクだけでなく、都市部特有のビル風などを考慮した精密な安全対策が求められている。
UAM業界関係者は「都市部で鳥との衝突が発生する可能性は低いが、万が一事故が発生すれば人的被害が大きいため、すべての変数を検討する必要がある。離着陸経路や鳥の飛行高度を研究し、衝突リスクを最小限に抑える努力が必要だ」と強調している。
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