犬食は法律上はどうなのか。現行の「畜産法」では牛や馬、豚などと一緒の家畜に含まれるが、「畜産物衛生管理法」が規定する家畜からは除外されている。
畜産法は畜産業の発展、畜産農家の所得増大、畜産物の安定的供給などを目的としている。一方で、畜産物衛生管理法は家畜の飼育、食肉処理、処理と畜産物の加工・流通・検査に必要な事項を定め、公衆衛生向上を目的とする。
すなわち、現行の畜産法と畜産物衛生管理法を合わせて考えると、犬は農家所得のために育てることはできても、食用を目的に加工・流通させることはできないということになる。
また、今年4月から施行された動物保護法改正案によると、「正当な理由」を除いて動物を死に至らせる行為を動物虐待と規定し、処罰可能にしたが、この理由に「食用目的」は含まれない。
◇「社会的に議論する仕組み」
何より食品衛生法は、「食品の基準や規格」の告示を通じ、食用可能な食品原料を明示しているが、犬肉はこれに該当しない。同法によると、犬肉の加工、流通、調理は違法となる。違反すれば5年以下の懲役や5000万ウォン(約551万円)以下の罰金刑を受けることができる。
それにもかかわらず、現在、一部の食堂で犬肉が流通している。
この現状について、ある政府関係者は次のように分析する。
「犬の飼育から食肉処理、再び食用までつながる問題は、農林畜産食品省、環境省、食品医薬品安全処など多様な省庁が絡んでいる。韓国に犬肉を食べる食文化も依然として残る半面、時代が変わり、動物福祉が強化された。犬肉をめぐる社会葛藤が激しく、犬の食用に関する処罰が進んでいない。社会的に議論する仕組みがつくられ、そこで出てくる結論を見守る」
韓国政府は2021年末、犬食廃止に向けた議論をするため、「犬食用問題議論のための委員会」を発足させた。この機構は、農林畜産食品省だけでなく関連団体、非営利機構、関連分野専門家、政府委員らで構成され、当初2022年4月まで活動する予定だった。
だが、結論を出せずに運営期間が延長された。
◇相次ぐ議員の発議
与党「国民の力」のテ・ヨンホ(太永浩)議員室の関係者は次のように指摘する。
「欧州や先進国は、すでに犬の食用そのものを禁止している。韓国もグローバル中枢国家を公言するのであれば、犬の食用を禁止する時期に来たということだ。現行法でも犬食が違法と判断できるという考え方がある一方、違法だと断言はできない、という主張も存在する。法の執行が不十分な状態であり、動物福祉侵害の状況が放置されている。犬食禁止法案が通過すれば、法律の執行がまともに実現するだろう。与野党による議論が始まれば、現在、犬食関連業種に従事する方々に対する補償に関しても具体的に扱うことになる」
過去の国会でも、個人の犬食を禁止する多数の法案が発議されたが、すべて、常任委員会の敷居を通過できないまま自動廃棄になった。
「共に民主党」のピョ・チャンウォン(表蒼園)氏は、議員時代の2018年、畜産物衛生管理法と家畜伝染病予防法で規定した例外的な場合を除く、動物に対する任意食肉処理を防ぐ内容を盛り込んだ動物保護法改正案を出した。これは食肉処理行為に対する規制を強化するもので、食用目的の犬の食肉処理、犬肉の流通を防止する法案と言える。
「正しい未来党」のイ・サンドン(李相敦)氏も議員時代の2018年、犬を家畜から除外する内容を盛り込んだ畜産法改正案を提出した。
「共に民主党」のハン・ジョンエ(韓貞愛)議員は2017年、食物廃棄物を収集、運搬またはリサイクルする場合、これを動物の餌として使う行為などを禁止する廃棄物管理法改正案を発議した。
食用目的の犬を飼う飼育場が、犬の餌に生ゴミを使っているケースが多く、事実上、食用犬の飼育を減らす効果を期待した法案だった。
(つづく)
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