現場ルポ
サムスン電子が今年の売上基準で米インテルを抜いて3年ぶりにグローバル半導体1位の座を奪還する。首位の座を固めるため、サムソン電子はファウンドリー(システム半導体委託生産)など、非メモリー半導体市場の攻略に集中している。
◇追いつ追われつの激しい競争
半導体専門市場調査機関のICインサイツによると、サムソン電子の今年の半導体の売上は830億8500万ドル(約9兆4866億円)で、売上ベースで1位を占める見通しだ。昨年の売上高は約619億ドル(約7兆677億円)で、1年で売上高が34%増えた。米国のインテルはサムスン電子より75億ドル少ない755億5000億ドル(約8兆6262億円)で2位となった。
業界は今年、サムソン電子の1位奪還を当然視している。メモリー半導体市場が好況だったうえ、ライバルのインテルが相対的に振るわなかったためだ。インテルはCPU(中央処理装置)市場で伝統的に強者だったが、最近になってAMDに押されている。
サムソン電子とインテルは、グローバル半導体トップの座をめぐり追いつ追われつしながら激しい競争を続けてきた。2016年にはインテル、2017~18年にはサムスン電子、2019~20年にはインテルが1位を獲得し、サムスン電子としては3年ぶりの王座奪還だ。
◇市場の状況が左右
サムソン電子とインテルの順位がひっくり返るのは、メモリー半導体市場の状況に左右される傾向が強い。サムソン電子はメモリー半導体市場では独占的なシェアを記録しているが、相対的に非メモリー市場のシェアが低いためだ。
英調査会社オムディアが今年第3四半期に発表した昨年の売上ベースでは、サムソン電子のメモリー半導体市場シェアは36.6%でトップだ。しかし、ファウンドリー分野では、トップの台湾積体電路製造(TSMC)に大きく遅れをとっている。香港のカウンターポイント・リサーチによると、第3四半期基準のファウンドリー市場でのシェアは、TSMCが56%、サムソン電子は3分の1以下の15%だった。
サムソン電子は、グローバル半導体の王座を守るため、ファウンドリー市場への攻略に拍車をかけている。メモリー半導体のほか、相対的に低迷している非メモリー市場でのシェアを伸ばして、状況変化にも揺らぐことのない1位になるというのがサムソン電子の目標だ。半導体市場では全体規模の約70%が非メモリー半導体だ。
サムソン電子のイ・ジェヨン(李在鎔)副会長は「2030システム半導体世界1位」というビジョンを掲げた。最近、米テキサス州テイラー市に20兆ウォン(約1兆9234億円)規模のファウンドリー新規工場の建設計画を確定した。来年上半期に着工し、2024年下半期から稼動する計画だ。
◇「システム半導体までしっかり生産を」
また、次世代トランジスタのGAA(Gate All Around)技術を適用した3ナノ(1nm=10億分の1メートル)第1世代の量産時期は、来年上半期になるとみている。TSMCの3ナノ量産のロードマップは来年下半期だ。業界ではサムソン電子がGAAベースの3ナノ工程量産に先に成功すれば、たやすくTSMCに追いつくことができるとみている。GAA技術は既存のフィンフェット(FinFET)技術工程より高効率・高性能と評価されている。
韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は次のような見解を示す。
「サムソン電子はメモリー半導体のトップではないか。そのためメモリー半導体の価格が上がればサムソン電子がトップになり、価格が下がる時はまたインテルがトップになったりした。完全なトップを維持するためには、順調なメモリー半導体に加えて、システム半導体までしっかり生産しければならない」
人工知能(AI)半導体とスマートフォン向けアプリケーションプロセッサー(AP)など高性能半導体市場が拡大しているのも、ファウンドリー投資を強化するサムソン電子には好材料だ。高性能半導体を設計する米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、スマートフォン向け半導体大手の米クアルコム、世界的な半導体メーカー「NVIDIA」、台湾半導体設計大手の聯発科技(メディアテック)などは、生産ではなく、大規模集積回路(LSI)の開発・販売に専念する「ファブレス」会社だ。
今年100億ドル(約1兆1418億円)以上の売上を上げた上位17の半導体企業のうち、今年の売上が昨年比50%以上増加をしたのは4社で、いずれもファブレス会社だ。AMD65%、メディアテック60%、NVDIA57%、クアルコム51%。アン専務は「高性能半導体市場が大きくなり、ファブレス企業の売り上げが増えるほど、サムスンやTSMCなどファウンドリー企業の顧客も多くなるだろう」とみる。
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