2025 年 7月 26日 (土)
ホーム社会狙われる自営業者…韓国で“進化”する詐欺犯罪と制度の空白

狙われる自営業者…韓国で“進化”する詐欺犯罪と制度の空白

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韓国で自営業者を狙った犯罪が進化を続ける一方で、その保護制度が追いついていない現実に懸念の声が高まっている。

典型例の一つが、虚偽のクレームをもとに金銭を脅し取るブラックコンシューマー(悪質クレーマー)だ。ソウル北部地裁は7月11日、配達料理に異物が入っていたと偽って2年間で305人の事業主から計770万ウォン(約88万円)を詐取した20代の女性に懲役1年を言い渡した。女性は自作の異物を使って犯行に及んだとされる。

また、大学職員を装った詐欺も発生した。光云大学の名を語り、ピアノ業者に納品を依頼した後に連絡を絶ち、結果的に業者が2000万ウォン(約230万円)もの損失を被った。

このように、自営業者をターゲットにしたノーショー(予約無断キャンセル)詐欺やなりすまし詐欺、さらにはボイスフィッシングに至るまで、匿名性を悪用した犯罪が横行している。

韓国法務政策研究院の「全国商業犯罪被害調査」によると、2015年時点で全国の自営業者のうち28.2%が何らかの商業犯罪の被害を経験していた。事業所100カ所あたりに換算すると、平均154.8件の被害があったという。

犯罪手口は年々巧妙化しており、特にノーショー詐欺の被害件数は2025年上半期だけで1957件、被害額は約250億ウォン(約28億円)に達した。大口予約を装って飲食店や宿泊業者に接触し、予約後に突然連絡を絶つといった手法が主流だ。

専門家は、過去の「投網型」犯行(無差別に多数を狙う)から「銛型」犯行(特定の対象を狙い撃つ)へと、犯罪のパターンが変化している点に注目している。自営業者は住所や連絡先の特定が容易なため、詐欺犯にとって格好の標的となっている。

慶南大学警察行政学科のキム・ドウ教授は「従来も『無銭飲食』など自営業者を狙った犯罪はあったが、最近はより知能的かつ進化している。これまで社会的弱者としての自営業者に対する保護が甘かった結果、今になってその脆弱性が表面化してきた」と指摘する。

加えて、景気低迷による事業者の切迫感や、大企業に比べて自営業者の情報取得力が低い点も原因とされている。2021年以降、自営業者の数は4年連続で増加しており、その数に比例して被害も拡大している。

こうした状況を受け、専門家は制度整備の必要性を訴えている。

キム教授は「米国では故意に営業損害を与えると懲役刑を科すこともあるが、韓国では単なる“ハプニング”として軽く扱われる傾向がある。被害者保護のためにも、加害者に対する処罰や金銭賠償の強化が急がれる」と強調した。

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