「韓国がコンテンツとサービスをうまく作る。しかし、グローバルな観点から見れば、大きく成功した韓国のサービスがない。グローバルで成功を収めたメタバースサービスを作ることが目標だ」
メタバースに関連したサービスを展開する韓国の「メタキャンプ」のソン・ヨンイル代表の言葉だ。メタバースは依然として可能性が無尽蔵な空間だ。拡張性に重点を置いたメタバースプラットフォームで世界の人々をつなぎ、新たな価値を創出する――こう意気込む。
新型コロナウイルス感染の時期、メタバースは「熱狂」と呼ばれるほど脚光を浴び、未来の収益モデルとして浮上していた。しかし、コロナが収まって急激な下落傾向を描き、メタバースに進出した多くの企業が関連事業から撤退した。
反転のチャンスはアップルが作った。混合現実(MR)ヘッドセット「ビジョンプロ」で空間コンピューティング市場を開き、低迷期に入っていたメタバースも新たな成長のチャンスをつかんだためだ。空間コンピューティングとメタバースは概念が少し異なるが、いずれも仮想現実(VR)・拡張現実(AR)技術をベースにしている。
専門家は今年がメタバース産業の「拡大元年」になると見ている。韓国では、2月にメタバース産業振興のための支援根拠を盛り込んだ「仮想融合産業振興法」が国会を通過し、500億ウォン規模のメタバースファンドが造成され産業的基盤が以前より強固になった。
◇創業者として苦労
メタキャンプは企業・機関が手軽にメタバース生態系を構築し、現実と仮想をつなぐことができるサービス型メタバース(MaaS)「there」を開発した。thereはパソコンとモバイルで接続可能で、ビジョンプロやメタクエストなど着用型画面(HMD)にも対応できるようにする。
真っ先にthereを採択したのは教育分野だ。メタキャンプはthereをベースにメタバース大学「メタバーシティ」を作り、全国60カ所ほどの専門大学の学生らが各大学別メタバース空間で入学式と卒業式、動画講義、サークル活動など多様な大学生活を楽しめるようにした。
非対面に慣れている「コロナ入学年度」の学生の場合、オンライン講義に対する需要が依然として高い。メタキャンプは、独自開発したメタバース用学習管理システム(LMS)と連動させ、大学別に異なるLMSをメタバーシティに統合し、講義受講から単位管理、集中度確認などをサポートする。
米国も有望市場だ。メタキャンプによると、米国は専門大学の概念であるコミュニティカレッジが1500余りで、オンライン授業の割合が40%に達する。現地でメタバーシティへの関心を示しており、米国進出を加速する計画だ。
2021年4月に設立されたメタキャンプは、業歴だけを見れば初期スタートアップだ。ただ、創業者であるソン・ヨンイル代表はゲームとVR分野に20年以上従事し、IT業界で経験を積んだ人物で、創業者としての生き方を続けながら辛酸をなめてきた。
ソン・ヨンイル氏は、落ちてくるブロックを合わせながら歌を楽しむ方式のリズムゲーム「O2Jam」運営会社のO2メディアを2000年に創業し、何と5000万人に達する利用者を集めた。韓国を越えて中国で大ヒットしたおかげだ。
しかし、経営知識が不足していたため、すぐに挫折を経験した。投資会社と持分紛争が発生し、結果的に会社から追い出された。そして、タイ行きを選び、その時、ちょうどシューティングゲーム「フォートレス」がタイ進出を控えており、これをパブリッシングするエンプレックスのタイ支社副社長を務めた。
さらに、その後、サイワールドで台湾マーケティング取締役を経て韓国に戻り、2006年、再びダンスゲームとリズムゲームで創業にチャレンジした。開発規模は大きかったが、パブリッシャーを務めることになっていた企業のゲーム事業撤退などのため破綻した。
◇メタバースは現実と仮想がつながる「デジタル転換」
無一文で過ごした時期、ソ・ドンイル氏に出会った。今はメタのVR専門担当組織になったスタートアップ「オキュラス」の創業者だ。ソン・ヨンイル氏は毎週、ソ・ドンイル氏と交流し、それがメタバース事業に本格参入するきっかけになった。
VRコンテンツ企業の創業で得た経験が2015年、メタキャンプの設立につながった。
ソン・ヨンイル氏は「メタバースは現実と仮想がつながる『デジタル転換』と定義した。そのような観点からサービスを作り出している。各空間での行動が相互の影響を及ぼす。現実と関連性のないアバターが、ただ3D空間を歩き回るのはメタバースではない」と指摘した。
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