
北朝鮮が空軍創設80周年を迎え、近年開発した新型無人機や早期警戒管制機などの戦略装備を公開した。空軍と海軍という「弱点」分野の戦力増強を急ぐキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の意図が鮮明になった形だ。
党機関紙『労働新聞』は11月30日、キム総書記が娘と共に、28日に元山(ウォンサン)・葛麻(カルマ)飛行場で開催された空軍創設80周年記念行事に出席したと報じた。
公開された写真からは、2023年に登場した「セッピョル」シリーズの偵察・攻撃用無人機や、今年3月に初公開された改造型の早期警戒管制機(AEW&C)などの存在が確認された。
なかでも「セッピョル-9型」は、米空軍の攻撃型無人機「MQ-9リーパー」に酷似した中大型ドローンで、「空の暗殺者」とも呼ばれる機体だ。これにより、北朝鮮の空軍が偵察・監視・攻撃を一体化した近代戦力にシフトしている可能性がある。
北朝鮮が披露した早期警戒管制機は、旧ソ連製の貨物機「イリューシンIL-76」をベースに改造されたものとみられる。機体上部にはレーダードーム(レイドーム)と呼ばれる円形の構造物が取り付けられ、空中で敵の航空機やミサイルを探知・識別し、作戦指揮が可能な「空の司令塔」としての機能を担う。
ただし、その性能や配備数については不明な点が多く、専門家の間では「実戦的な監視・偵察能力を持つには複数機が必要で、現段階での即応性には限界がある」とする見方が強い。
記念行事では、キム総書記が「新たな戦略的軍事資産」と述べた装備群として、核弾頭搭載可能と主張される「ファサル)」シリーズの巡航ミサイルや、地対艦ミサイル「バダスリ」も展示された。
さらに今回初めて登場したのが、韓国軍が運用するドイツ製長距離空対地ミサイル「タウルス(TAURUS)」に酷似したミサイルだ。戦闘機の翼下に装着されていたこのミサイルは、最大射程約500キロ、地下10メートルに達する貫通力を持つとされる高精度兵器であり、北朝鮮が独自に開発したのか、ロシアや中国の技術支援があったのかは明らかではない。
キム総書記は式典演説で「空軍には新たな任務が課される」「核戦争抑止力行使の一翼を担う」と強調。韓国軍の動向を近代化した監視資産で探知し、事前に先制打撃する構想が含まれている可能性がある。
専門家は、今年の海軍力強化(新型駆逐艦の建造など)に続き、空軍への本格的な投資が始まったことを指摘。「北朝鮮は2026年に開催される第9回労働党大会で、従来兵器の近代化方針を打ち出す可能性が高い」との見方も示されている。
北韓大学院大学のヤン・ムジン特任教授は「来年以降、ロシア製の新型戦闘機の導入なども検討される可能性がある」と分析している。
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