2024 年 5月 7日 (火)
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火がついた日韓の「夢の電池」競争

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3月17日午後、ソウル市江南区のCOEXで開かれたインターバッテリー展示会©news1

日韓の企業が「夢の電池」の開発を急いでいる。早ければ2025年から全固体電池が搭載された電気自動車が発売される見通しだ。

全固体電池とは、陽極と陰極間のイオンを伝達する電解質を、液体ではなく固体に替えた電池だ。火災の危険がなく安定しており、エネルギー密度も高めることができる。充電時間も相対的に短い。

全固体電池は高い安定性と機能性をベースに、既存のリチウム電池に代わる「ゲームチェンジャー」とされる。SNEリサーチによると全固体電池市場は、昨年の2GWh(ギガワット時)から2030年には135GWhと、70倍近く拡大する見通しだ。

業界関係者によると、韓国ではサムソンSDIが全固体電池の開発で先行しているという評価だ。同社は最近、京畿道(キョンギド)水原(スウォン)のSDI研究所に6500平方メートルの全固体電池パイロットライン(モデル生産設備)に着手した。

サムソンSDIは、固体電解質の設計と合成に成功し、全固体電池の試作品を作るなど、技術開発を先導してきた。今回のモデル生産を経て、2027年に全固体電池を市場に出すという計画だ。サムスンSDIは1回の充電での走行距離が900キロを超えるとみている。これは現在の2倍の水準だ。

LGエネルギーソリューションは3月17日に開かれた「インターバッテリー2022」で、全固体電池生産のロードマップを公開した。2026年に高分子系全固体電池、2030年に硫化物系全固体電池の発売を目標にしている。同社は昨年、常温で早いスピードで充電できる長寿命の全固体電池技術も開発した。

SKオンは昨年10月、全固体電池技術の先端をゆく企業である米国ソリッドパワーに3000万ドルを投資して、次世代全固体電池を開発している。両社は既存リチウムイオン電池のNCM(ニッケル、コバルト、マンガン)陽極材とシリコン陰極材を適用した全固体電池を開発中だ。

SKオンのチ・ドンソプ(池東燮)代表は「インターバッテリー2022」で「サムソンは当社より少し早くスタートした。現在全固体電池の発売を準備している」と明らかにした。

日本の場合、完成車メーカーを中心に韓国のメーカーより早く動いてきたと評価されてきた。最も進んでいるのはトヨタだ。トヨタは昨年9月、全固体電池搭載の電気自動車を世界で初めて公開した。2025年には全固体電池自動車を発売する予定だ。

日産は2024年に横浜工場内で全固体電池の試作品生産設備を構築した後、2028年には全固体電池搭載の電気自動車を発売することを目標としている。

ホンダは独自に電気自動車のバッテリー開発に取り組んでおり、今年1月に米国の電気自動車バッテリーメーカーSESホールディングスと協定を結んで、共同研究も進めている。

ただ、全固体電池が商用化されても、リチウムイオン電池を短期間で取り替えるのは難しいという見通しも出ている。SNEリサーチが予測した2030年の全固体電池の市場規模(135GWh)は、全体の電気自動車のバッテリー市場規模である3254GWhの4%程度にとどまっている。全固体電池が2030年前後に発売され市場に定着する間、リチウムイオン電池も同様にエネルギー密度や寿命、充電速度など、性能が改善されると観測されているためだ。

リチウムイオン電池より高く設定された価格問題など、短所をどれだけ早く克服するかが代替速度を左右するとの見通しだ。

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