韓国・務安国際空港で衝突事故を起こした済州航空B737-800型機(機体番号HL8088)が、短い運航間隔でフライトスケジュールが組まれていたことが判明した。航空業界では、今回の事故を機に、航空機の安全整備体制を根本的に見直す必要があるとの声が上がっている。
同機は事故2日前、27日午後10時33分に務安国際空港に到着した。次の目的地はマレーシアのコタキナバルで、出発予定時刻は同日午後11時35分。着陸からわずか1時間2分で、乗客の降機・搭乗・離陸準備を終え、コタキナバルに向かった。
◇48時間で13回運航、背景に「離陸整備最短時間28分」
航空当局と業界などによると、HL8088は事故直前の48時間で13回運航していた。務安、済州、仁川、北京、タイのバンコク、マレーシアのコタキナバル、長崎、台北といった都市を行き来していた。民間航路追跡業者「フライトレーダー(FR)24」と航空技術情報システム(ATIS)によれば、空港間の離陸準備時間はわずか1~2時間程度だった。
航空会社は機体の点検・清掃・給油を済ませ、次の目的地への出発を準備する。通常、乗客が降りて再び搭乗するのに約30分かかることを考慮すると、今回の事故機が離陸整備に費やした時間は短くて30分、長くても1時間30分と推定される。
済州航空は離陸整備の最短規定を最大限に活用していたとみられる。
業界によると、国土交通省は航空機ごとに「離陸整備の最短時間」を定めている。事故機B737の場合、この時間は「28分」とされている。
「28分」は航空業界で「収益最大化時間」と呼ばれている。大手航空会社(FSC)よりも、格安航空会社(LCC)が積極的に採用する傾向がある。整備を含む離陸準備時間を1時間以内に抑えることで、少ない機材で最大限運航して収益性を高めるためだ。
業界のある整備士は「乗客の降機後に機内の警告灯を確認し、目視で機体外観の損傷の有無をチェックする」と述べ、「1時間で再び離陸したのであれば、整備に最短時間しか費やしていないようだ」と話した。
◇済州航空、国内航空会社で最多
済州航空は、韓国国内の主要航空会社の中で旅客機1機当たりの運航時間が最も長い。
今年第3四半期基準で、済州航空の月平均運航時間は418時間で、大手航空会社(FSC)の大韓航空(355時間)やアシアナ航空(335時間)はもちろん、同じLCCのティーウェイ航空(386時間)、ジンエアー(371時間)、エアプサン(340時間)よりも多い。月平均運航時間が400時間を超えるのは済州航空だけだ。
B737-800の稼働率も済州航空が最も高い。国土交通省によると、今年1~11月の済州航空のB737-800の1日平均稼働率は14.1%で、ジンエアー(11.4%)、ティーウェイ航空(10.9%)、イースター航空(6.5%)など他の航空会社と比べて最大2倍以上に上る。
同省関係者は「稼働率を含め、航空機の運航前後の点検・整備などの記録を確認して、各種規定が適切に順守されているかを検討する」と話している。
◇ビジネスモデルと密接に関連
航空業界は、済州航空の長い運航時間はそのビジネスモデルと深い関係があると分析している。
済州航空は、LCCの先駆者とされる米サウスウエスト航空の運営方式を韓国で最も積極的に導入した航空会社だ。2時間以内の短距離運航▽B737の単一機材▽航空機の回転率の最大化――などを通じてコストを削減し、収益率を最大化することが「サウスウエストの10の鉄則」として知られている。
しかし、サウスウエストと済州航空の最大の違いは機材の規模だ。昨年末時点で、サウスウエストはB737を817機運用する超大規模LCCだが、済州航空は韓国最大のLCCながらB737の機材規模は41機に過ぎない。このため「航空機の酷使」に関する指摘が出ている。
済州航空は「無理な運航ではない」との立場を示している。済州航空経営支援本部長のソン・ギョンフン氏は「B737-800は離着陸回数が比較的多いかもしれないが、長距離路線に使用される航空機ではない」と述べ、「無理な運航は絶対にせず、一切の手抜きなく徹底的に整備している」と強調している。
業界の別の関係者は「済州航空の運航時間が長いのは事実だが、418時間そのものが問題になるわけではない」としながらも、「重要なのは運航そのものよりも整備にどれだけ注意を払っているかだ」と指摘した。
◇「航空機整備体制の大改革が必要」
業界関係者は、今回の惨事を契機に航空機の点検体制を大幅に改善する必要があると強調している。安全よりも収益性を優先する航空会社の整備体制を見直すだけでなく、航空当局の規制も強化する必要があると指摘している。
現在、韓国の航空会社の中で自社航空整備施設を保有しているのは大韓航空とアシアナ航空だけだ。済州航空をはじめとするLCCはすべて自社施設を持たず、国内の航空整備会社や海外業者に外注している。
業界関係者は「コロナのエンデミック以降、抑制されていた海外旅行需要が爆発し、旅客機が休む時間もなくなった。安全が最優先であることは当然だが、航空会社にとっては収益性を高めるスケジュールを組むことも重要な課題だ。航空機の供給が円滑でない状況で需要が高まっており、整備を含むシステム全般を点検して、改善する必要がある」と指摘する。
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