
風力と太陽光を動力とする無人海洋観測プラットフォーム「セイルドローン(Saildrone)」が、従来の有人調査方式の限界を打破し、気候研究から国防・安全保障分野まで多用途での活用が広がっている。米国のセイルドローン社を中心に、米国オーシャン・エアロ(Ocean Aero)、ノルウェーのオフショア・センシング(Offshore Sensing)など複数企業が市場を牽引しており、国際機関による気候監視プロジェクトにも継続的に採用されている。
2024年に世界のセイルドローン市場は約61億7000万ドル規模に達し、2032年までに約77億2000万ドルへ拡大すると見込まれている。さらに無人水上戦闘艦市場も2024年に13億2000万ドルに達し、2033年には39億3000万ドルまで成長する見通しだ。背景には、気候変動への対応や持続可能な海洋利用、安全保障上のニーズがある。
セイルドローンは燃料を使わず数カ月間自律航行が可能で、二酸化炭素排出ゼロの「緑の海洋技術」として位置づけられる。実際の活用例として、2021年に米国海洋大気庁(NOAA)とセイルドローン社が大西洋でハリケーン「サム」の中心部へ投入し、時速190キロの暴風域から初めてリアルタイムで観測データを取得した。また2019年には南極海で二酸化炭素放出を観測し、気候システムにおける南極海の役割を再定義する重要資料となった。
セイルドローン社は米カリフォルニア州に本社を置き、Explorer、Voyager、Surveyorの3モデルを運用中だ。Explorerは小型で1年以上の自律航行が可能、Voyagerは米国船級協会の認証を得て国際港で商業運用が合法的に可能、Surveyorは水深1万1000メートルの多重ビーム測量が可能で、国際的な海底地図プロジェクト「Seabed 2030」に参画している。さらに同社は水上航行から水中への移行を可能にする「水中水上遷移技術」の開発も進めており、探査や救助活動への応用が期待される。
こうした技術力を背景に、セイルドローン社は6000万ドルの投資を受けデンマーク・コペンハーゲンに欧州本部を設立、2025年にはバルト海にVoyager4隻を配備する計画を進めている。
一方、韓国国内では依然としてプロペラ推進型の無人水上艇(USV)や自律無人潜水艇(AUV)の研究が中心で、セイルドローン型の商用化には至っていない。2017~2019年に韓国産業振興協会の支援で「韓国沿岸に適したセイルドローン研究開発」が進められたが、推進器ベースの基礎研究に留まり、国際的な商用化水準には達していない。
韓国海洋科学技術院の研究者キム・ミンギュ氏は「産学官連携を通じて需要基盤を確立し、実証事業で初期技術を確保すべきだ」と指摘。さらに「米国やノルウェーなど先進企業との技術協力により共同開発と技術移転を推進し、国際会議や研究交流を通じて人材を育成する必要がある」と述べた。
専門家は、制度整備や産業エコシステム構築、海外機関との戦略的協力を同時に進めることで、韓国のセイルドローン研究が将来的に海洋無人システムの核心技術へ発展できると強調している。セイルドローンは、海洋安全、環境監視、災害対応において国家的能力を引き上げる「次世代の切り札」として期待されている。【news1 ペク・スンチョル記者】
(c)news1