
韓国で2025年の新学期から、小学3・4年と中・高校1年を対象に、数学・英語・情報の3科目で人工知能(AI)デジタル教科書が初めて導入される。
辛うじて教科書としての「地位」を維持し、学期開始前に購読料の交渉も完了したものの、低い採択率、実際の活用可能性、デジタル機器中毒への懸念、そして教育効果の証明といった多くの課題が残されている。
教育省は、AI教科書を活用することで、いつでもどこでも誰でも個別最適化された教育を受けられる点を「最大のメリット」として強調している。これにより、学校教育のみで「英語を諦めた生徒(英放者)」「数学を諦めた生徒(数放者)」が生まれることを防ぎ、「眠る教室」を変えていくことを目指している。
AI教科書の導入目的には大いに共感できる。しかし、実際の教育現場でAI教科書の個別学習効果を直ちに証明するのは難しく、相応な時間が必要のようだ。
教育省によれば、AI教科書を用いた生徒の学習データが十分に蓄積され、個別最適化が機能するようになるまで、少なくとも6カ月はかかるという。これは、昨年実施されたAI教科書のデモンストレーションでも指摘されていた。
そのため、3月からAI教科書が活用されるとしても、期待された個別最適化学習の効果がすぐに表れるわけではなく、その間に生徒が混乱を経験する可能性がある。
◇採択率の地域格差、デジタル機器中毒への懸念
地域ごとに採択率に大きな差があることも課題だ。2月17日時点で、AI教科書を採択または採択予定の学校は全国で32.3%にとどまっている。
最も高い採択率を記録した大邱市では98%だったが、世宗市ではわずか8%にとどまり、むしろ「地域別教育格差」を拡大する結果となっている。
また、デジタル機器中毒への懸念も根強い。AI教科書のデモンストレーションや教育博覧会の会場では、多くの保護者が「家庭ではデジタル機器を制限しているのに、学校で一律にAI教科書を導入するのは問題ではないか」と懸念を示した。
AI教科書に対する教育現場の懸念を払拭するには、結局のところ「教育効果の証明」しかない。
まず、全国同時接続によるネットワーク障害、ファイアウォールの問題、情報流出リスクなど、導入初期に発生する可能性のある技術的課題を最小限に抑える必要がある。また、1学期を通じて安定した運用と体系的な学習管理を進め、信頼性を確立することが重要だ。
近年、韓国では読解力低下の問題が深刻化している。教育省は「一度使ってみれば、生徒や保護者も満足し、採択校も増えるだろう」と自信を見せている。
しかし、教育は「百年の計」であり、楽観は禁物だ。現在わずか30%の採択率を、教育省が目標とする「2学期には50%以上」に引き上げるためには、基礎学力不足の改善や学習満足度の向上といった具体的な成果を示し、教育効果を証明する必要がある。【news1 イ・ユジン記者】
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