
地面に足をつけて歩くというのは、私たちが日常生活を送るうえで最も基本的な身体活動である。普段は意識することはなくても、両足と脚は自然とバランスを取っている。不慮の事故や予期せぬ疾患により歩行が困難になることはしばしばあるが、病院の外ではそれを矯正したり回復させたりする手段がほとんどなかった。
これまで、患者の歩行を分析するには取得しなければならない情報があまりにも多く、改善点を見つけたとしてもそれを精密に補助できる機器はなかった。リハビリテーション科や整形外科を訪れ、専門の装置で診断を受ける必要がある分野だった。
韓国の「エンジェルロボティクス(Angel Robotics)」が最近発売した股関節補助ウェアラブルロボット「エンジェルスーツ H10」は、多くの障壁が存在する歩行治療の分野に新たな可能性を切り開く可能性がある。「電動式整形用運動装置」として2等級の医療機器認証を取得している。
エンジェルスーツ H10を実際に着用し、製品の作動方式を確認してみる。着用方法は、腰にベルトのように巻きつけた後、膝の部分のバックルを留めるだけでよい。非常に簡単だったが、2.8kgの重さはやや感じられた。
サイズもかなり大きい。両側に駆動装置がそれぞれ付いているため、骨盤が厚くなったような感覚を受けた。ベルトの内側はクッションのように厚みがあり、柔らかかった。夏に屋外で着るには暑そうだった。
着脱可能なバッテリーは腰の前側に別途装着する形式で、2,900mAhのリチウムイオンバッテリーが使用される。バッテリーのせいで重さのバランスに違和感はなかった。身体に直接触れないため、発熱による不快感も少ないように見えた。
韓国人の平均的な体型に合わせて設計されており、ウエスト24〜40インチ、身長150〜190cmの範囲で使用者に合わせて調整して着用できる。
製品を着ても、最初は特に変化は感じられなかった。やや厚くてしっかりした服を着ているような感覚だ。ここで電源を入れた瞬間、変化が始まる。

ロボットが利用者の歩き方のパターンを読み取っている。ロボットの関節は普段は静かにしているが、利用者が足を踏み出そうとした瞬間に力を加えてくれる感覚が強く伝わってくる。
歩こうとして足を出さなければ、ロボットが少し「だまされる」ような感覚もあった。そのような場合でも無理に補助力を加えることはなく、動きに合わせて自然に停止する。
エンジェルロボティクスは、既存のエンジェレックス M20に搭載されていた足底圧センサーを使わず、新たな動作意図把握アルゴリズムを開発した。骨盤と両太ももの動きだけで人の動作意図を認識する。
トレーニングの過程では最初こそ違和感があるが、すぐに慣れてくる。逆に、着用中にロボットを脱ぐと歩くのが重く感じられる時間が長くなる。速度は軽く走る程度まで補助できる。補助力は両足それぞれで調整が可能だ。

製品は5種類のトレーニングプラグインを提供している。機能の活性化を助ける歩行補助(スマート補助)、立ち座りのサポート、安全なトレーニングのための関節運動制限、機能を強化するための抵抗トレーニング(水中歩行)、負荷調整(宇宙歩行)を受けることができる。
機能強化に用いる抵抗トレーニングを作動させると、水の中をずっしり歩いているような感覚が得られる。負荷モードでは宇宙でふわっと浮かんでいるような動きが感じられる。
トレーニング後には、リアルタイムのセッションモニタリングと動作分析レポートを通じて、歩行状態やトレーニング前後の改善効果を定量的に評価できる。体系的な患者個別のトレーニングが可能だ。
単に活動時間や歩数、歩行距離だけでなく、歩行の左右非対称指数や骨盤の左右傾きの程度なども把握できる。分析された情報は動作分析結果として出力し、確認できる。

H10製品は現在、公立の総合病院に配備され、パーキンソン病や慢性脳卒中、小児麻痺などの患者を対象に実証が進められている。外来診療の際、日常生活動作のトレーニングに役立つ点が医療スタッフから高く評価された。ただ、まだ初期段階であり、具体的な臨床効果については公表されていない。
エンジェルロボティクスは、今回のエンジェルスーツの発売を通じて本格的な市場拡大に乗り出す。医療およびヘルスケア市場への進出を手始めに、国防や産業安全など多様な分野へと技術応用の範囲を広げるという。
(c)KOREA WAVE