カカオやクラプトン、NCソフトなど、韓国の主要IT企業各社が相次いで、株主還元策を発表し、株主を「なだめ」始めている。これらの企業は新型コロナウイルス感染の恩恵が浮き彫りになった「成長株」に分類され、株価が急騰したものの、当局の規制や、期待した新作の不振などによる成長低迷で株価が急落した。
このため、市場で影響力が増大している個人株主を含め株主を対象にした優遇政策を示すなど、積極的なコミュニケーションの意思を示し、崩れかかった市場の信頼回復に拍車をかけている。株主だけでなく社員にも「成果の共有」というシグナルを発信し、士気高揚にもつなげられるとみている。
◇初めて中長期の株主還元策を提示したカカオ
IT業界で積極的な株主還元策と責任経営の意思を示しているのはカカオだ。カカオは交通サービスアプリ「カカオT」の料金引き上げに触発された「路地商圏」侵害論議に続き、カカオペイ経営陣の大量売りで「食い逃げ」論議まで重なった。
一時、17万3000ウォンまで値上がりしたカカオの株価は1月末、一時、ピーク比の半分足らずの8万2200ウォンまで下がった。成長株が低迷したせいもあったが、カカオへの市場の信頼が失墜したことも、株価に影響を及ぼした。
これを受け、リリーフとして登場したカカオのナムグン・フン代表理事内定者は「カカオの株価が15万ウォンになるまで、年収やインセンティブ支給の一切を据え置き、法定最低賃金のみ受け取る」と宣言した。
カカオはこうした中、初の中長期株主還元政策を実施すると発表した。まず今後3年間、フリーキャッシュフロー(Free cash flow)の15~30%を財源に、このうち5%を現金配当、10~25%を自社株購入・消却する一方、会社の成長によって追加配当を進める予定だ。特に、今年は3000億ウォン規模で自社株の消却を進める予定だ。
◇IT業界、拡大する株主還元策「怒った株主をなだめる」
クラウド事業部を物的分割すると明らかにした「NHN」は、最近開かれた第4四半期実績カンファレンスコールで、今年から2024年までの3年間、直前の事業年度の別途財務諸表基準でEBITDA(減価償却費差引前の営業利益)の30%を財源にして株主還元に乗り出すと発表した。
NHNの株価は昨年11月中旬まで5万2000ウォン台で取引されていたが、クラウド事業の切り離しが決定されてから下落し、3万2000ウォン台まで下落した。
韓国の代表的なゲーム会社であるNCソフトも今年から2024年にかけて、毎年、連結当期純利益の30%を現金で配当する内容を盛り込んだ3カ年の配当策をまとめた。一時、100万ウォンを超えるグループに仲間入りしたNCソフトだが、昨年8月の「Blade & Soul 2」の不振で株価が急落した。現在、株価は50万ウォン以下まで下がっている。
予想を大きく下回る株価の流れを示しているクラフトン。株主への還元策について悩んでいる。クラフトンのペ・ドングンCFOは「クラフトンが経験している株価不振は行き過ぎだと思う。長期的な観点から株主の方々への直接的な還元策を考えている」と言及したことがある。
◇成長株、異例の配当拡大「市場とコミュニケーション、信頼回復」
インターネットやゲームなどの成長株が異例に配当を強化するなどの株主還元策を打ち出しているのは、市場とのコミュニケーション強化を通じて信頼を回復するためだ。また、責任経営に拍車をかけ、株主価値の保護を通じた企業価値の向上にも乗り出すという意志と見られる。
新型コロナ以後、個人投資家をはじめ、市場参加者が急激に増えており、投資家の発言権が拡大する。潜在的消費者でもあり得る彼らの声にこれ以上そっぽを向くわけにはいかない、いう判断も働いたものと見られる。3月に株主総会を控えている状況で、適切な株主還元策の提示は避けられなかったという声もある。
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