2024 年 12月 21日 (土)
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校内暴力で疲弊する世界各国 [KWレポート] ドラマじゃない“韓流いじめ”のリアル (6)

アリシャさんを追悼するフランス市民ら(c)AFPBBNews/news1

2021年3月、パリのセーヌ川で発見されたある遺体がフランス社会を揺るがした。警察による確認の末、遺体の身元は14歳の少女アリシャさんと判明した。

彼女を殺害した容疑者として名指しされたのは、同じ学校の生徒たちだった。アリシャさんの友達だった15歳の男子生徒A君と15歳の女子生徒Bさんは、ある喧嘩をきっかけに彼女をいじめ始めた。彼らはアリシャさんの携帯電話をハッキングし、下着だけを着た写真をSNSのスナップチャットに流したのだ。一連の事実を学校懲戒委員会に回付され、2人は停学処分を受けた。

事件当日、Bさんは和解しようと、アリシャさんをセーヌ川埠頭に呼び出した。次に、柱の後ろに隠れていたA君がアリシャさんに拳と足で一方的に暴行を加えたのだ。アリシャさんがぐったりしたため、2人は証拠を隠滅しようと、アリシャさんを川に沈めた。この時、アリシャさんはまだ意識があったという。

2人は犯行後、血がついた服を着替えて、パリ中心部で夕食をとった。

事件後、国民的な怒りが高まり、フランス政府は、保護者や学校当局、警察が参加するタスクフォース(TF)を発足させ、対策作りに乗り出した。アリシャさんの死亡から半年後には、また別の校内暴力の被害者が自ら命を絶つ事件が発生。対策を求める世論はさらに大きくなり、マクロン大統領が直接乗り出して校内暴力の根絶を指示した。

仏議会は、校内のいじめを刑法上の犯罪と規定する法案を用意した。加害者の年齢といじめの程度によって最大3年の懲役刑または4万5000ユーロ(約647万円)の罰金が賦課されるという内容だ。被害学生が自殺するなど被害が大きい場合には最大懲役10年の懲役刑と15万ユーロ(約2157万円)の罰金を宣告できる。

同法案は昨年2月、議会を通過した。現地メディアは「校内暴力を犯罪化すれば、これが誤った行動なのだと人々が認識しやすくなる。(該当法案は)抑圧的ではなく、むしろ教育的な解決策に近い」と評価している。

◇問題解決に親を参加させる

世界各地が校内暴力で疲弊しており、処罰を強化する流れが生まれている。

米国では、連邦法には校内暴力対応のための法律がないが、50州全てで校内暴力に事実上対応する州レベルの法律と政策を設けている。ミシガン州は04年、刑法に学校暴力処罰条項を新設した。これによると、校内暴力による死亡事件の加害者は15年以下の懲役か1万ドル(約132万円)以下の罰金に処することができる。

さらに学校暴力加害者の両親に責任を問うこともある。ウィスコンシン州ラピッズ市議会は2019年、加害生徒の両親に罰金と手数料を合わせて最大313ドル(約4万1200円)を賦課する法案を承認した。これに先立ち、ニューヨーク州ノーストナーワンダー市は、子どもが学校で他の生徒をいじめる場合、両親を最大15日間拘禁したり、罰金250ドル(約3万3000円)を賦課したりできる制度を2017年から施行している。

こうした法的枠組みには、問題解決の過程に親を参加させる狙いがあるとみられる。

◇「目撃者を傍観者にしない」取り組み

中国でも、加害者の両親を処罰することがある。法制処世界法制情報センターによると、違法行為の未成年者は法律によって懲戒され、刑事責任を負わなければならない。さらに、未成年者の両親や後見人も責任を果たせなかったという理由で「未成年者犯罪予防法」により懲戒される。

中国では「刑法」に伴う刑事処罰制限年齢が16歳とされるが、校内暴力被害者が殺害されるなど深刻な事件が相次いで発生したことを受け、2020年に殺人・傷害・放火などの重大事件に限り、14歳以上16歳未満の青少年も刑事処罰を受けられるように法改正された。

一方で、加害者への厳罰ではなく教育で学校暴力を防ぐという国もある。フィンランドだ。

フィンランドはいじめ防止のための学習プログラム「KiVa(キヴァ)」を運営する。KiVaは、フィンランド語の「いじめに立ち向かう(Kiusaamista Vastaan)」という言葉から4文字を取って命名されたものだ。フィンランド政府はこのプログラムに対する開発資金を支援し、現在フィンランドのすべての学校でKiVaを施行している。

KiVaの目的は、校内暴力の目撃者を傍観者にしないことだ。役割劇やコンピューターゲームなどを通じ、いじめに対抗する方法を学ばせ、いじめを防ぐ規約も自分たちで作るようにする。フィンランドの学生たちはこの教育を年に20時間ずつ履修しなければならない。プログラムの導入により、フィンランドでは校内暴力の予防効果も出ており、他の欧州諸国や米国なども積極的に導入する動きがみられる。

(おわり)

(c)MONEYTODAY

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