2025 年 5月 2日 (金)
ホーム政治李在明氏が韓国大統領になれば裁判は中断されるのか…最高裁の破棄差し戻しで再燃した「不訴追特権」論争

李在明氏が韓国大統領になれば裁判は中断されるのか…最高裁の破棄差し戻しで再燃した「不訴追特権」論争

韓国最大野党「共に民主党」大統領候補のイ・ジェミョン(李在明)氏(c)news1

韓国最大野党「共に民主党」大統領候補のイ・ジェミョン(李在明)氏が公職選挙法違反の罪で有罪趣旨の破棄差し戻し判決を受けたことで、韓国憲法第84条が規定する「大統領の不訴追特権」を巡る論争が再び激しさを増している。6月3日の大統領選でイ・ジェミョン氏が当選した場合、裁判を中断すべきか否かを巡って憲法解釈の議論が高まっている。

大法院(最高裁)全員合議体は1日、公職選挙法違反の罪に問われたイ・ジェミョン氏に対し、無罪を言い渡した原審を破棄し、事件をソウル高裁へ差し戻した。大法院の破棄差し戻し判断には拘束力があり、新たな証拠が提示されない限り、原審がこれに反して無罪を言い渡すことはできない。このため、イ・ジェミョン氏に対する有罪判断は事実上確定したとの見方もある。

問題は、6月3日の大統領選でイ・ジェミョン氏が当選した場合に、残る裁判をどのように扱うかだ。イ・ジェミョン氏は、大統領に就任すれば裁判をすべて中断すべきだという立場を取っているが、不訴追特権の解釈については憲法学者の間でも意見が分かれている。

韓国憲法第84条は「大統領は内乱・外患罪を除いて在職中に犯した犯罪で刑事訴追を受けない」と定めている。ここで「訴追」が起訴に限るのか、裁判の進行まで含むのかについては、見解が分かれている。

この問題に対し、一部では最終的に憲法裁判所が憲法解釈の権限を行使する可能性があると指摘されている。

まず一次的には、訴訟指揮権を持つ各裁判所が裁判継続の可否を判断できるが、イ・ジェミョン氏は8件の事件について5つの裁判を受けているため、事件ごとに裁判所の判断が異なる場合、深刻な混乱が生じる可能性がある。明確な規定がない中で各裁判所が職権で判断することも相当な負担となる。

このため、最終的にはすべての裁判を統括する大法院が、裁判を中断するか否かの判断を下すことになるとみられている。特に大法院が今回、有罪趣旨で破棄差し戻しを決定したことから、イ・ジェミョン氏の裁判を中断する意志はないとの見方もある。仮に裁判を中断させる意図があったのであれば、大法院は最初から事件を高裁に差し戻さなかったはずだという主張だ。

仮にイ・ジェミョン氏が大統領に当選した後も個別の裁判所が公判を継続した場合、イ・ジェミョン氏が憲法裁判所に「権限争議審判」を請求するシナリオも有力視されている。これは国家機関間で権限の有無や範囲に関して争いが生じた際に、憲法裁が判断を下す制度である。

つまり「イ・ジェミョン」個人ではなく、「大統領」という国家機関として大法院に対し権限争議を申し立てることになる。この場合、憲法裁判所が憲法84条の不訴追特権に対する最終的な解釈権を持つことになる。大法院が裁判を継続したことで、大統領の不訴追特権が侵害されたか否かを憲法裁が判断することになる。

しかしこの場合でも、憲法裁が明確な解釈基準を提示しない可能性もある。大法院と憲法裁判所は共に憲法上の最高司法機関として独立した立場にあり、互いに干渉しない構造となっているためである。

高麗大学法学専門大学院のチャン・ヨンス教授は「韓国では大法院と憲法裁判所がそれぞれ独立性を尊重する構造にあるため、通常の裁判については憲法訴願審判の対象にもならない。仮に権限争議審判が請求されたとしても、認められるのは極めて難しい構造だ」との見解を示している。

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