この映画には2019年のインタビューが盛り込まれているため、現在の政治状況と異なる部分が、かなり多い。
インタビューに出た人々のうち、例えばユン氏は現在、野党の有力候補になった。当時には想像できなかった変化だ。インタビューには出ないが、演説の様子で登場するイ・ジェミョン京畿道知事は、与党の候補になった。パク・ヨンス特別検察官は(イ候補がソウル近郊の城南市長在職時の都市開発事業に関する)大庄洞開発不正疑惑と関係しているとされる。パク・ウォンスン(朴元淳)ソウル市長、チョン・ドゥオン(鄭斗彦)議員は既にこの世にいない。
――わずか数年前なのに、あまりにも変わった現在を見て、どんな気がするか。
キム氏 何とも言えない複雑な思いだ。ほかの取材でも言ったが、私がこのインタビューをした当時は、検察当局のパク・ヨンス、ユン・ソンヨル両氏に対する市民の気持ちが強かった時だ。インタビューが終わった後、写真を撮ろうと頼んだりもした。しかし、一方は完全に別のスタンスで、国民の力の大統領選候補になり、もう一方は大庄洞不正疑惑で疑いを持たれている。実にダイナミックだ。それで編集の方向を変えなければならないのかと考えたりもした。しかし、この映画は過去の特定時点でろうそくについて話すのだから、それも意味があると見た。それで編集はしなかった。
チュ氏 ろうそくの歴史はそのままだ。国民もそのままだ。その人たちだけが変わったのだ。人はこうやって変わるのだ。私たちはまったく同じ場所にいる。この映画の中での登場人物の数人だけが変わったのだ。
国政介入事件の核心人物の一人だったコ・ヨンテ氏が出演したのが最も印象的だった。
――インタビューは容易ではなかったと思うが、どのように説得したのか。
チュ氏 コ・ヨンテ氏は国政介入事件の時、重要な役割を果たした。検察がその周辺をたたき、無理やり刑務所に入れた。監獄に行って帰ってきた時、苦しい生活をしていた。外に顔を出すのが難しかったのではないか。「君が出演することに意味がある」と説得し、なんとかインタビュー席に座ってもらった。インタビューしてみたら、コ氏の考えがとても深かった。あとでコ氏の話を聞かせてあげたい。非常に映画的だ。
キム氏 国政介入事件当時、コ・ヨンテ氏という人の個人史を見ながら劇映画化してもいいと思った。チュ記者がそのようなコ氏に交渉したと聞いて非常に驚いた。彼に会ったとき、歴史の隠れた人物が私の前に出てきた感じがして胸がどきどきした。
――お二人が共同演出したが、意見の違いはなかったか。
チュ氏 大きな違いはなかった。ただ、私はこの作業を最初に始める時、軽いロードムービー形式に作りたかった。カメラを持ち歩きながらインタビューを試み、挫折し、その過程を映画にすべて盛り込むやり方で……。だが、キムさんはそのような内容を排除して、本物の正統な(ろうそくを)深く見つめ直す形で作ろうと言い、そうなった。とにかくインタビューを残しておくのがとても意味がある。その時も今も、言う態度が似ている人もいれば、完全に別の話をする人もいる。それで私たちが残しておかなければならなかった。
キム氏 私は、少し保守的で安定したドキュメンタリーを作りたかった。今振り返ってみれば、チュ記者の思い通りに作っていたら、もっと面白かったはずだ。しかし、それには根本的な限界があった。2016年、(ろうそくデモの現場に)カメラを持ち出さなかったという点だ。私たちが直接撮った記録がないというのが最大のネックだった。
結局、最もインタビューしたかった人のは、パク・クネ前大統領だったと思う。
――もし、パク・クネ前大統領にインタビューできるなら、どのような質問を投げかけたいか。
キム氏 あなたを大統領にした人は誰かと聞きたい。資格不足の指導者を元の位置に戻すために、われわれはどれだけ多くの社会的費用を払ったのか。ならば、この人が資格不足であることを知っていながら、自分たちの政治的目的のために彼女を大統領に押し上げた人は誰なのか、と聞きたいものだ。彼らはまた同じことをするかもしれない。
チュ氏 あなたはいかなる人物なのか、と問いたい。どのような人生を過ごし、どのような考えで大統領になり、どのように統治したかったのか聞きたい。パク・クネという人がどんな人なのか、おおやけに話したいのだ。実際、韓国国民がパク・クネという人についてよく知らないまま、大統領に選んだ。それが私たちの悲劇だった。
――最後に「私のろうそく」を通じて観客にどんなメッセージを伝えたいか。
チュ氏 歴史がたまに後退することもある。たくさん後退する時もある。それでも国民が、その後退した歴史をこれから前進させるという話をしたい。若い世代に誇らしい韓国の歴史について話してあげたい。
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