2025 年 11月 14日 (金)
ホーム経済流通早朝配送論争、焦点は「健康権」に…韓国・夜間労働は「命に関わる」問題

早朝配送論争、焦点は「健康権」に…韓国・夜間労働は「命に関わる」問題

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クーパンの早朝配送サービスをめぐり韓国で議論が続く中、医療関係者の間ではこの問題を政治・経済的な視点ではなく、「健康権」の観点から再構築すべきだとの声が上がっている。特に、夜間労働が人間の生体リズムや回復機能に与える影響を無視した「回復なき労働」は、単なる疲労ではなく深刻な生理学的疾患につながるという警鐘が鳴らされている。

梨大木洞病院職業環境医学科のキム・ヒョンジュ教授は「夜間労働は人間の生理的リズムに構造的に適合しない。繰り返されれば睡眠障害、心血管疾患、代謝異常、うつ病などのリスクが高まる。これは個人の選択の問題ではなく、科学的に検証された健康有害因子として医学的な基準から扱うべき問題だ」と指摘した。

世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、2012年に夜間労働を「グループ2A=ヒトに対して発がん性の可能性がある因子」と分類。特に10年以上、夜間勤務を続けた女性労働者は、乳がんのリスクが40~56%高まるという研究結果もある。韓国国内の製造業や運輸業に従事する労働者を対象とした研究でも、夜間固定勤務者の心血管系疾患による死亡率は日勤者の約2倍に上るとされる。

夜勤は交感神経を常に緊張状態に保ち、自律神経の回復を阻害する。睡眠時間が4時間未満の状態が2週間以上続くと生体リズムが崩壊し、コルチゾールの過剰分泌や免疫低下、炎症反応の活性化などが起き、高血圧・内臓脂肪型肥満・高血糖・高脂血症といった代謝異常が現れる。これらは最終的に心筋梗塞や脳卒中のリスクへと発展する。

キム・ヒョンジュ教授は「夜勤とは、ただ夜に働くことではなく、回復のための時間を根本から奪う働き方だ。緊張状態が常態化すれば、自律神経の調整能力が損なわれ、睡眠・食事・運動のリズムも崩壊する」と説明している。こうした変化は若年層にも疲労感や不眠、消化不良などの形で現れ、40代以上では急性心疾患に繋がる恐れがあるという。

一部では「早朝配送は労働者の自主的選択」との意見もあるが、職業環境医学の専門家は、実際には構造的な雇用条件や生活のための圧力によって「選択の自由」が大きく制限されていると指摘している。生理学的リスクは選択の有無に関係なく発生するため、夜間労働の繰り返し自体が問題だという認識が必要だと強調する。

WHOと国際労働機関(ILO)は、週55時間以上の長時間労働が脳卒中リスクを35%、虚血性心疾患リスクを17%高めると警告しており、国際学術誌では夜勤後に自律神経の回復に失敗した交代勤務者は、心拍変動性が固定化され、これが継続されると突然死のリスクが増加すると報告されている。

こうした背景から、医療界では「回復可能性」を基準にした労働環境の再設計を求めている。すでに一部の自治体では、交代勤務者を対象に自律神経検査、睡眠日誌、ストレス評価などの試験事業が実施されており、今後は健康モニタリング体制の拡充も課題となる。

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