
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏の各種疑惑を捜査している特別検察チームは公判記録の中で、世界平和統一家庭連合(旧教団会)元世界本部長、ユン・ヨンホ氏がハン・ハクチャ(韓鶴子)総裁の指示を受け、キム・ゴニ氏や野党「国民の力」のクォン・ソンドン(権性東)議員に接触し、2022年大統領選でユン・ソンニョル氏の当選を支援したと明記した。
97ページにわたるキム・ゴニ氏の起訴状によると、ユン・ヨンホ氏は2022年の大統領選を前に、教団の政策を国政に反映させ、教団と友好関係を築ける候補者を探し始めたとされる。特にキム・ゴニ氏への高級ブランドバッグ贈呈や、クォン・ソンドン議員への金品提供は、すべてハン・ハクチャ総裁の承認を受けた行動だったと記されている。
ハン・ハクチャ総裁の決断により、教団は人的・物的資源を投入してユン・ソンニョル氏の選挙を積極的に支援した。キム・ゴニ氏もこの支援を認識していたとされ、教団が集団で「国民の力」に入党した件についても、ハン・ハクチャ総裁の指示の下で進められたと起訴状は記している。
教団の支援の背景には、内部抗争と財政難があった。2012年にムン・ソンミョン(文鮮明)総裁が死去した後、ハン・ハクチャ総裁と三男のムン・ヒョンジン氏との間で後継争いと資産訴訟が続き、財政が逼迫していたという。
ハン・ハクチャ総裁は2019年10月、大阪で開かれた大会で「国家は教祖の意志で運営されるべきだ」と発言し、「政教一致」の理念を明確に打ち出した。これを実現するため、教団は国連第5事務局の韓国誘致、カンボジアでの「メコン・ピース・パーク」建設、非武装地帯(DMZ)での平和公園設置などの事業を推進していた。
これらのプロジェクトは政府予算や人事、政策と深く関わるため、教団側はキム・ゴニ氏や与党幹部に接近し支援を求めた。ユン・ヨンホ氏は2021年末から2022年初頭にかけて、「世界日報」の副会長だったユン・ジョンロ氏を通じてクォン・ソンドン議員と面会し、教団行事「朝鮮半島平和サミット」へのユン・ソンニョル氏出席と引き換えに、組織票と物的支援を提供すると提案していた。
また、教団は2022年2月13日にユン・ソンニョル氏と米副大統領を務めたペンス氏の面談を演出し、まるで米国がユン・ソンニョル氏を支持しているかのような印象を与えた。さらに同年3月2日には、ハン・ハクチャ総裁が教団イベントでユン・ソンニョル氏支持を公言した。
キム・ゴニ氏に対しては、2022年4〜7月にグラフのネックレスやシャネルバッグ2点など総額8200万ウォン超の金品が渡されたとされ、特別検察はその事実を把握している。贈与の際、国連第5事務局の誘致支援や、教育相との面会の仲介など、教団の要求事項も同時に伝えられた。
特に注目されるのは、2022年7月15日にキム・ゴニ氏が電話で「韓国政府として教団に協力している」と述べ、金品提供に感謝を伝えたとされる点だ。これにより特別検察は、キム・ゴニ氏が特定犯罪加重処罰法上のあっせん収賄罪に該当すると見ている。
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