「ハロウィンには、梨泰院を歩きたくて来る人が多いです。コスプレを撮影したり、道端をぐるぐる回ったりする楽しさがあるんです」。雑踏事故が起きたソウル・梨泰院(イテウォン)の世界グルメ通りで店を経営するソンさん(45)は、悪夢に変わったハロウィンを思い出し、複雑な表情を浮かべた。
当時、ソンさんの店の前はいつにも増して多くの人が集まった。「ハロウィンのたび、居酒屋とクラブが集中している場所に人が最も集まる。世界グルメ通りもハロウィンになれば人が多くなる。今年は特にそうだった」と振り返る。
梨泰院商圏は、事故が発生した場所を中心とした半径500メートル以内で、区域ごとに特色あるように形作られている。ただ、この3年間、新型コロナウイルス感染により、高い賃貸料と権利金に勝てず、相次いで廃業した。
韓国不動産分析学会が発表した「新型コロナウイルス前後のソウル商圏売上の空間的変化」研究によると、2020年の梨泰院流動人口は新型コロナが発生した2019年と比べて最大73%減少した。梨泰院観光案内所によると、この半年間、梨泰院市場の案内要請も大幅に減った。
それでも、世界グルメ通りが梨泰院の「ホットプレイス」という名前を維持したという。梨泰院で30年間食堂を運営してきたチェ・ウンチョルさん(57)は「新型コロナ以後、梨泰院駅一帯の商圏が多く死んだが、(クラブや飲み屋が集まっている)世界グルメ通りはいつも若い人たちが多く集まっていた」と話している。
今年、梨泰院には3年ぶりの「野外ノーマスク」ハロウィンを迎え、各地から記録的な人波が集まった。梨泰院一帯の住民・商人らも「今まで見た人波の中で最も多かった」と口をそろえた。
梨泰院全体の祭りだったハロウィンは悲劇になった。梨泰院で15年間居酒屋を経営してきたカン・シンイルさん(58)は「ハロウィンだけを期待して、1年間商売している。新型コロナ以降、やっとできたとかと思ったら、またこうして……」と言葉を続けることができなかった。
©news1