
韓国・済州島で捨て犬を保護する民間団体が新たな制度対応のためシェルターを移転し、約100匹の犬が居場所を失った。背景には農林畜産食品省が進める「民間動物保護施設の届出制」がある。これまで個人が運営してきた施設を法的に管理下に置く狙いだが、現場ではむしろ捨て犬を窮地に追いやるとの声も出ている。
翰林邑の「翰林シェルター」では2025年8月、109匹の犬が臨時保護所へ移された。2016年から暮らしてきた場所を離れるのは初めてだった。新制度により2026年4月までに正式な保護施設として届出が必要となり、規定された建物・設備を備えなければならないからだ。冷暖房設備や隔離室、餌や水の管理施設など細かい基準が定められており、事実上600㎡規模の建物2棟の新築が求められる。
運営団体「ジェジェフレンズ」は2025年、政府の環境改善支援事業の対象に選ばれ、9月末に建築許可を得た。しかし完成までの間、臨時保護所は水道も電気も乏しく、寄付のミネラルウォーターなどでしのいでいる。多くの犬は老犬や大型犬で、長年保護され続けているため里親も現れにくい状況だ。
ホン・ナニョン代表は「できれば場所を移したくなかったが、行政上の理由で叶わなかった。環境変化で体調を崩す犬も増え心配」と語る。既に約6000万ウォンの寄付を集めたものの、最終的には1億ウォン以上の借金を背負ったという。
新施設完成後の維持も課題だ。冷暖房機8台を稼働させれば電気代が膨らみ、既存施設で月1〜2万ウォンだった光熱費が大幅に跳ね上がる。現在は理事12人とボランティアが支えるが、済州の多くの民間施設は同様に寄付と奉仕だけで成り立っている。
「民間施設の陽性化」という名の下で掲げられた大規模基準が、逆に捨て犬保護の新たな「陰」を生むのではないか――現場からはそんな懸念が強まっている。
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