2024 年 11月 24日 (日)
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捨てられた魚網からスポーツウェア、そして「地球も私も健康に」

Startup Story ~~ 成功のカギ

ポジティブ・ミー キム・ハナ代表

キム・ハナ代表©MONEY TODAY

「カナダの有名なスポーツウェア『ルルレモン』のレギンス、1点の価格が15万ウォン(約1万4446円)程度です。似たような国内ブランドは2万9000ウォン(約2800円)でワン・プラス・ワン。どうしてこんなに安いのでしょうか」

ポジティブ・ミーのキム・ハナ代表はこんな問いかけをした。

答えはこうだ。

「ナイロンのような安いプラスチック生地で作ったからです。でも、伸縮性のある運動服はプラスチックを原素材にしていますね。こんな運動服がつくられるたびに環境が損なわれると考えるべきではないでしょうか」

12月中旬を過ぎると、街中には新年の目標に「ダイエット」を掲げる人が少なくない。そして、身体にフィットするレギンスのようなアクティブウェアがよく売れるようになる。

キム・ハナ代表は、色とりどりに染まった運動服の間でポーズを取りながら、こう訴えかけた。

「これからは韓国のヨガ、ジョギング、ピラティス(ドイツ人トレーナーが考案した運動)のウェアも、欧米のように環境に親和的な価値を盛り込んだ『サステイナブル』(持続可能)を考慮する時です」

◇ファッション業界も変化

持続可能なファッションのための国連アライアンス。国連の各機関と連携団体が立ち上げた枠組みで、ファッションに関わる者が行動を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することを目標とする。

アライアンスによると、ファッション産業は2019年基準でみると、世界の温室効果ガス排出量の約8~10%を占めるそうだ。繊維の製造プロセスでの水質汚染は全体の20%、海に流れ出る微細繊維プラスチックは毎年19万トンに達する。ファッション業界も、環境汚染から自由であるわけではない。

世界中で「カーボンニュートラル」政策が強く推し進められるなか、韓国内外のファッション業界でも「変化が必要だ」という自浄の声が上がる。

ポジティブ・ミーは「環境にやさしいアクティブウェア」を事業アイテムにしたフェムテックのスタートアップだ。廃プラスチックを回収して精製した、環境にやさしいリサイクルナイロン「エコニール」、木材パルプから精製されてつくられる天然植物性生地「テンセル」……。こうした素材からスポーツウェアをつくっている。

こうした製品は、ウェルネス(より良く生きようとする生活態度)に関心の高い女性、持続可能性や倫理的消費などの価値観を高く評価するMZ世代が高く評価しているという。

機能性の面でも引けを取らない。テンセルの場合、丈夫なうえ吸水性が高い。生産プロセスで汚染物質が発生せず、特に廃棄の際に土に埋めれば1カ月で生分解される。

◇ブランド戦略デザイナーを経験

グッチやプラダのような著名ブランド品でも、国際基準に沿って環境にやさしいエコ染色用法を使うとか、ユーカリやコーンの抽出物など、植物を原材料とするエコ生地を使用しているという。

キム代表はこう耳打ちした。「私たちもこうした生地を製造する海外企業と契約し、ヨガやランニングの服なんかの製作を考えています。近年、国内でも小規模リサイクル生地の製造会社が1つ、2つできていて、彼らと接触しているのです」

ポジティブ・ミーのアクティブウェア製品のイメージ©MONEY TODAY

ポジティブ・ミーは最近、環境にやさしい生地でブラジャーのパッドを独自に製作した。あるクラウドファンディングサイトで今月、「環境にやさしいスポーツブラ4種」を発表すると、ファンディング目標金額の1024%を達成するという大人気だった。

キム代表は創業前、オランダのブランディング専門エージェンシーでブランド戦略デザイナーとして働くなど、この分野で10年間、腕を磨いた。

「5年前にニューヨーク都心で『アスレジャールック』(Athleisure look、スポーツウェアをファッショナブルに着こなすこと)でジョギングする人が増えました。このマーケットがすぐに大きくなると考え、関連ブランドの戦略、生産ラインの構築、マーケティングなどの業務を担当するようになりました。自然の流れでエコ運動服のブームにも接するようになりました」

キム代表が目標に掲げていること――それは「環境汚染の深刻さを減らしていき、健康な暮らしを目指す『エコ消費トレンド』をつくりあげていくこと」。シンプルかつ重要な視点だ。

©MONEY TODAY

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