
韓国バイオ産業が世界市場での存在感を強める中、技術流出に対する警戒感も高まっている。最近、韓国の大手バイオ医薬品受託開発製造(CDMO)企業「サムスンバイオロジクス」の元社員が、国家核心技術を含む機密資料を社外に持ち出そうとした罪で実刑判決を受け、業界に衝撃を与えた。
仁川地裁は、サムスンバイオロジクス元社員が産業技術保護法などに違反した罪で懲役3年の実刑判決を言い渡し、法廷で拘束した。この元社員は2022年12月、仁川松島の本社でA4用紙約300枚分の社内資料を服の中に隠して持ち出そうとしたところ、警備員に摘発された。
この判決が注目される理由は、韓国バイオ産業の飛躍的成長にある。10年前までは経済への寄与度が小さかったバイオ産業は、今や米国など海外で新薬承認を受けるなど、「K-バイオ」の名で国際的な存在感を示している。サムスンバイオロジクスは世界的製薬企業と多数の契約を結ぶグローバル企業に成長し、韓国政府もバイオ技術を国家核心技術に指定している。
だが、技術レベルの向上に比べ、現場の情報保護意識は依然として甘いとの指摘も多い。今回のように社内での不満を理由にSNSや匿名掲示板「ブラインド」などに営業秘密を漏洩するケースも後を絶たない。
実際、バイオ業界で技術流出に対し実刑判決が出た例はほとんどなく、処罰の甘さも“ひと儲け”を狙う流出の温床になっていたとの声もある。これに対し韓国政府は、技術流出に対する罰金上限を65億ウォンに引き上げ、2月には初めて懲役7年の判決を下すなど処罰の厳格化に乗り出している。
業界関係者は「バイオ技術は国家の未来を担う資産であり、たった一度の流出でも致命的な損害を与える可能性がある。技術保護は単なる義務ではなく、生存戦略だ」と強調している。
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